たぶん彼はずっと後悔していたのです。
自分が赤いミニカーをなくしたせいで父親が死んだと考えていたのでしょう。
それほど頻繁に事故現場を訪れてはいないことは花の萎れ具合でわかります。
しかし20年という長きにわたりそこを訪れ、手を合わせてきたのです。
彼は心の中で父親に語り続けていたに違いありません。
『お父さんごめんなさい。僕がミニカーを無くしさえしていなければ』と。
そして彼はずっと当時と同じ家に住んでいます。
もし父親がミニカーをどこかに届けてほしいと頼むとしても、当時住んでいた住所しか答えられないはずです。
前後の幽霊の言動から、幽霊は物に触ることも感じることもできないことからそう推察できます。
となると誰がそのミニカーを届けたのでしょうか。
誰が届けたのか
届けたのは八雲御子です。
生きている御子にしかそれはできません。
人と関わることを極端に避けていた御子にその幽霊が言った言葉が全てを物語ります。
「20年間ずっと下ばかり見ていたから」
引用:ルームロンダリング/配給会社:ファントム・フィルム
この言葉は『20年間ずっと下ばかり見ていた』御子の心に突き刺さりました。
御子も20年間ずっと下ばかり向いていたのです。
そしてその経験によって少し上を向くことができたのでしょう。
ただし、気づいた時点で御子は駆け出しているので、線路沿いの幽霊案件は少し後の解決と思われます。
線路沿いの幽霊
そもそもなぜ20年もの間赤いミニカーを探し続けたのでしょうか。
おそらく彼は探し出せれば成仏できると考えたのです。
彼の未練とは何だったのでしょうか。
赤いミニカーを探し続けた理由
他の幽霊のことを考えると、死んだその場から動くことはできそうもありません。
部屋の中かその近辺が限界なのでしょう。
ずっとそこに魂が残っているとしても、何もせずボーっとしていてもおかしくはないはずです。
でも彼は『赤いミニカー』探し続けました。
おそらく息子に探すと約束したことを守れなかったことが心残りで成仏できないのです。
とにかく探し出して息子に届けてやらねばという一念で幽霊となっていると思われます。
幽霊の服装を見ると冬です。
息子に買ってやったクリスマスプレゼントだったのでしょうか。
息子がひと目で自分のものと判ったことから、既に手渡してあったと判断できます。
ということは年末頃の事故だったのかもしれません。
ほんの数秒の出演シーンでありながら、これだけのことを想像させる俳優柄本時生の演技は絶賛に値しますね。
幽霊のその後
思いを遂げれば幽霊は成仏できるのでしょうか。
一般的に死者に対して使われる意味としては『この世に未練を残さず死んで仏になる』ことを意味します。
言い換えれば『未練があっては成仏できない』のです。
線路沿いの幽霊は未練なく成仏できたのでしょうか。
そこは描かれていません。
一つの未練が消えれば次の未練が生まれるようです。