出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B01ARNZ1JE/?tag=cinema-notes-22
映画「グラスホッパー」は伊坂幸太郎原作の小説を「脳男」で知られる瀧本智行が実写化した作品です。
キャストには主演の生田斗真、脇に山田涼介や菜々緒、浅野忠信など豪華な布陣の元に製作されました。
以下が本作の受賞歴です。
受賞
第25回日本映画批評家大賞新人男優賞引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/グラスホッパー_(小説)
あらすじは恋人百合子を交通事故で失った元教師・鈴木が復讐の世界に身を窶すというものです。
その世界では様々な人間の情念が複雑に絡み合う世界でどんどん複雑に拗れあう人間関係。
本稿ではネタバレを含みながらラストの黒いバッタの意味を考察していきます。
また、誰が何のために書いたのか不明な手紙の意味、鯨の幻影と蝉の耳鳴りの原因も見ていきましょう。
タイトルの意味
本稿を考察していく上でまずはタイトル「グラスホッパー」の意味を理解しなければなりません。
意味は当然「バッタ」ですが、本作では「環境次第で何色にも染まる」という意味で使われています。
バッタは育った環境の明るさや場所で体色が変化する、いわゆつ保護色を持っているのです。
そしてこの特徴がラストシーンを含め本作を読み解いていく重要なキーワードになります。
黒いバッタ
ラストシーンは鈴木の家庭に居た黒いバッタが去るという意味深なカットで締めくくりました。
上記したバッタの特徴を踏まえた上でこのラストシーンには何の意味があるのでしょうか?
黒いバッタ=復讐の世界の住人
本作の黒いバッタは鈴木が足を踏み入れた復讐の世界の住人の象徴です。
夜の渋谷交差点で人の群れを俯瞰で撮ったショットがその黒いバッタの群れを表わしています。
普通の人だったら絶対に関わってはいけない人の闇に鈴木が足を踏み入れる構図です。
バッタに例えると鈴木はさしずめ明るい世界で生きていた緑のバッタではないでしょうか。
そして彼も復讐の世界に身を窶す内にいつの間にか黒いバッタになってしまっていたのです。
復讐の消化
そんな復讐の象徴であった黒いバッタが最後鈴木の家から飛び去っていきました。
それは鈴木の復讐が終わりを告げ、元の優しい緑のバッタに戻ったことを意味します。
とはいえ鈴木は何か特別なことをしたわけじゃなく、基本理不尽な仕打ちを受けてばかりです。
彼自身は誰かに復讐をしたわけではなく、比与子には拘束され寺原にまで嘲笑われてしまいます。
余りにも無力ですが、ここで一線を超えず復讐しなかったことこそが最大の復讐でしょう。
無事に生き延び恋人百合子を大切に思い長生きすることが鈴木の復讐の消化になったのです。
命あっての物種
鈴木は押し屋の寺原を誘き出す為に彼の妻と名乗る人間の所属する組織に利用されたのです。
正直者が馬鹿を見た格好となったのですが、だからこそ生き延びられたのではないでしょうか。