故に一見サイコパスっぽく見えて意外と感性は繊細なのかも知れません。

抑圧

自由と社会的抑圧 (岩波文庫)

蝉はナイフを握ってる時と岩西と話してる時以外耳鳴りから解放されないという特徴があります。

彼は鯨とは違い罪の意識があったわけではなく、他者を殺すことを何とも思っていません。

そんな彼にとって最大の原因となったのは「抑圧」「束縛」でした。

だから蝉にとってはこの現代社会こそ抑圧・束縛だらけで成り立っていると思えたのでしょう。

岩西との関係がどこか相棒以上の情があったのも根本は抑圧・束縛から解放されるからです。

悲しき対立

蝉の大事な相棒だった岩西の命を奪った鯨と殺し合いになるのは必然の流れでした。

彼ら二人の間には「殺し屋」以外の共通点・接点らしきものは何もありません。

だからといって二人とも自分が生き延びてやるという生への執着もないままでした。

二人の殺し合いは非常に格好いいアクションながら、一抹の悲しさが感じられます。

この時の山田涼介、浅野忠信の演技合戦は本作の見所の一つです。

原作との相違

グラスホッパー (角川文庫)

さて、ここまで述べてきた「グラスホッパー」ですが、実は原作にはあるオチが用意されています。

それは一連の事件が全て鈴木の幻覚であったかもしれないというものでした。

この説だと鯨も蝉も現実離れした殺し屋・押し屋達が出たのは彼の闇人格の反映だと納得出来ます。

しかし、実写版となる本作ではこのオチが採用されることはなく、あくまで現実として描かれました。

それはそもそも映画という媒体が「実を写す」ものだからではないでしょうか。

原作が鈴木の幻覚で生まれた物語なら、実写はそれが現実に起こったらというIFの物語といえます。

この辺り、作り手はかなり意識的に取捨選択を行ったのでしょう。

復讐の普遍性

復讐・嫌がらせの手口★ヤリたいオッサンたちのせこい努力★裏モノJAPAN【ライト版】 裏モノJAPANライト

映画「グラスホッパー」は復讐へ身を窶した男がどんどん深みにはまり、寸前で助かる物語でした。

それは鈴木のような健全な若者でも一歩間違えれば誰でもが復讐鬼となる可能性があるということです。

復讐はいけないことだと誰もが分かっていながら、しかし根源的に誰にも復讐そのものは否定できません。

なぜなら人間の心には光と闇、善と悪の双方が存在し、復讐心だって闇・悪に属するものだからです。

人間必ず一度はこいつを死ぬほど殺したいと思うくらいに憎い相手と出会います。

大事なのはそこで理性をもって踏みとどまり、自分の心と戦えるか否かではないでしょうか。

鈴木は最も力なき者でしたが、復讐の一線を最後まで超えなかった彼は一番心強き者でした。

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