2002年以降ビリーのアスレチックスは4年連続プレーオフに進出しています。
しかしワールドシリーズには手が届きませんでした。
マネーボールとは
選手の年棒に割ける各球団の予算に格差が広がったのがこの時代です。
ヤンキースの年棒総額はアスレチックスの3倍近いという事実も映画の中で触れられています。
これを皮肉ったのが『マネーボール』という言葉です。
それは財力のない球団にとって「野球はベースボールではなく『マネーボール』だ」と嘆く言葉でした。
金銭で選手を売り買いするのは昔からですが、それが顕著になってしまうと『金銭ゲーム』になってしまうという意味なのです。
結局は財力の差がチーム力の差なのだという嘆きを表しています。
ビリーの本当のホームラン
映画では『古いスカウト』対『新しい理論』の構図で描かれましたが実際にはむしろスカウトマンは増えました。
知られざる選手を発掘し契約するために、今までより多くの目が必要になったのでしょう。
『セイバーメトリクス』のようなデータ分析統計の応用はスポーツ全般そして企業や政府にまで広がりました。
それこそがビリーが打った『知らぬ間にスタンドインしたホームラン』ではないでしょうか。
そしてこれはビリーを欲しがったレッドソックスオーナーの予見通りでした。
映画マネーボールを支えたキャストとスタッフ
比較的新しい事実をもとにした作品の場合、実際のイメージからかけ離れないように作らなければ観客がついてきません。
それを踏まえたキャスティングやノンフィクションが得意なスタッフを揃えることが重要になってきます。
監督
監督はベネット・ミラーで、『カポーティ』『フォックスキャッチャー』に続いて3作目のメガホンです。
いずれも事実に基づいた話の映画化ですので、そういった分野が得意な監督なのでしょう。
当初は『オーシャンズ11』などのスティーブン・ソダーバーグが監督する予定でしたが、脚本に納得がいかず降板しています。
ソダーバーグ監督も事実をもとにした作品が得意ですから『ソダーバーグ版』も見てみたかったですね。
キャスト
何と言っても主役のビリーを演じたブラッド・ピットを射止めたことがこの映画を成功に導きました。
実在のビリー・ビーンのイメージを崩すことなく、抜群の存在感で彼の葛藤を見事に演じ切っています。
ちなみに青年ビリーを演じたリード・トンプソンがブラッド・ピットにあまりに似ているのでCGではないかと噂されました。
こういったところにもアメリカ俳優陣の裾野の広さを感じます。
ピーターを演じたジョナ・ヒルはコメディー畑でキャリアを重ね、本作で演技の幅を広げました。
ビリーの元妻の夫役で『マルコヴィッチの穴』などで知られるスパイク・ジョーンズ監督がカメオ出演しています。
スカウトたちが理解できなかったこと
アスレチックスの改革の根幹となった理論、『セイバーメトリクス』とは何でしょうか。
それは選手の評価や戦略を立てるための手法のことです。
セイバーメトリクスの意味
セイバーメトリクスは野球史の研究家で野球統計の専門家でもあるビル・ジェームズによって提唱されました。
『経験則から評価する基準』を排除し、単に『数字』のみで選手を評価して采配に『統計学的根拠』を与えようという理論です。
野球を知っている者、特に野球が好きであればある者ほどこの理論には否定的で歓迎はされませんでした。
当然アスレチックスのスカウトたちにも理解されません。
ファビオとは
スカウトたちにビリーが言った『ファビオを探す』の意味はそこにいた全員が理解できませんでした。