出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07ZXNVRF8/?tag=cinema-notes-22
『パージ:大統領令』に次ぐシリーズ第4作目『パージ:エクスペリメント』は、パージ法の制定前の世界を描いています。
前作までの監督が脚本を担当し、『パラノーマル・アクティビティ』などのホラー映画に関わったジェイソン・ブラムが製作担当です。
イラン・ノエルが主人公ディミトリを演じ、殺人などの犯罪が12時間だけ合法化したスタテン島内を生き延びます。
シリーズ4作目となった本作は、映画の根幹であるパージ法が作られた目的が大いに描き出されました。
NFFA(新しいアメリカ建国の父たち)が制定するパージですが、緊迫した映像のためパージの「真の」目的を把握できなかった人も居るはず。
さらに犯罪を行う人たちが合法にも関わらず、なぜわざわざマスクをしているのかもシリーズを通した謎です。
今回はパージ制定を急ぐ政府の「真の」目的、わざわざマスクをする人々の心理という映画の根幹を考察します。
貧困層と富裕層
パージ制定時のアメリカは、経済的な大混乱が起きている時期で社会的な変革が必要とされています。
その中で政権を握ったNFFAは、ストレス(怒り)の発散の目的としてパージ制定を目指してきました。
しかしこれは表向きの目的であり、その裏側には真のNFFAの目的があります。
そこには、貧困層を世の中から排除しようという目的と、富裕層に対する娯楽を与える目的がありました。
犯罪率の低下を目指す
NFFA首席補佐官のサビアンが、マリサ・トメイ演じるアップデール博士にパージの真の目的を追及されるシーンがありました。
その際サビアンは、犯罪率の低下を目指して貧困層を排除することを語ります。
この国の人口は増え過ぎた。犯罪数や失業者数もうなぎのぼり
引用:パージ:エクスペリメント/配給会社:ユニバーサル映画
現実問題としても、犯罪の数の割合に占める貧困層の数は少なくありません。
政府として、犯罪を防ぐために貧困層が排除(パージ)される法律を制定したかったのです。
社会保障費の削減
貧困層はお金がないため、生きていくことが大変であり、政府はその手助けをしなくてはなりません。
つまり生活保護費などのお金を支給しますが、経済的に混乱している政府にとって、その費用を捻出するのは簡単なことではないのです。
破綻した政府に国民の面倒を見る余力は残っていない。国民は増税に反対し、借金ばかりで何も払えない
引用:パージ:エクスペリメント/配給会社:ユニバーサル映画
先ほど紹介したシーンでの、続きのセリフです。
やはりNFFAとしては、貧困層の排除という犠牲を払いながらも、政府の支出を抑えようとする目的があるのでした。
政府のお金を支給「される」側の人を排除し、もともとから高い税金を支払っている富裕層を残すことで、経済再生を目指すのです。
白人主義
アメリカ国内で、貧困層に多い割合の人種は黒人や移民してきたヒスパニック(スペイン語圏の人々)です。
これらを排除することで、NFFAは白人の国を作り上げようとしています。これはパージ反対派のリーダーナイアから叫ばれました。
どうせこうやってまた黒人やヒスパニックを虐げる気なんだ
引用:パージ:エクスペリメント/配給会社:ユニバーサル映画
本作で脚本を務めるジェームズ・デモナコは、前作までの監督を務めており、トランプ政権に反対する監督としても有名です。
トランプ政権といえば、メキシコとの国境に壁を立てる政策を打ち出したことで有名。
このような現実問題がNFFAのパージ制定の目的に投影されています。
富裕層の批判を避ける
貧困層の怒りを発散させるという名目のパージ法ですが、これは富裕層の怒りを発散させることにもつながります。
その方法は、住民がパージに参加して犯罪を行っている全ての様子を映像として放映することです。
では、その映像は誰が見るのかというと、スタテン島を逃げ出した人々を含む富裕層になります。
実際にパージ発令後最初の殺人シーンを映像として流したところ、映画内では2000万回動画が再生されたことを語っていました。
富裕層にとって、貧困層の殺人映像は娯楽の1つとして捉えられているのです。