旧三部作がローガン主役の『ウルヴァリン・サーガ』だとすれば、新三部作は『フェニックス・サーガ』だと言えます。
本作は覚醒し制御できなくなったジーンを『排除』するのではなく、仲間として『元に戻したい』と思うX-MENたちの話です。
シリーズの根底には『マイノリティーへの偏見』がありました。
それもあってジーンを『単純な敵』ではなく最後まで『仲間』として話を構築していったのでしょう。
炎が『フェニックス』の形になって空を羽ばたくという『フェニックス・サーガ』の結末として相応しいラストシーンです。
意志の無かったフェニックスという強大なエネルギー集合体がジーンという意思を持ったのかもしれません。
ネタバレになりますが、原作のコミック版ではジーンは全宇宙の脅威となりプロフェッサーXも殺してしまいます。
フェニックス・フォース
ジーンを変えてしまったあのエネルギーはいったい何だったのでしょうか。
それはヴークの言葉にヒントがあります。
ジーンの中にある力の根幹とは
ヴークはジーンに「あれは事故ではなくあなたが引きつけた」と言い、あれはフレアではなく「宇宙の力」だと言いました。
もう一度自分たちの星を作りたかったヴークたちには『神の力』に等しいものです。
ジーンの力は『怒り』によって増幅することは幼いころの事件でわかっています。
その力と同調するということは『宇宙の力』の源も怒りなのかもしれません。
さまざまな理由によって理不尽に命を失った多種多様な生命体が放った『怒り』の集合体だからジーンとシンクロするのです。
ジーンは変わってしまったのか
元からあった力を呼び覚まし更に強大な力へと進化させ、ジーンには制御できなくなりましたが人格が変わったのではありません。
今まで押さえつけられていた記憶がよみがえり我を忘れたジーンでしたが最後に自分を取り戻しました。
そこには仲間たちの思いや、サイクロップスへの思いがあったはずです。
最後の最後に地球を救ったのは『ダーク・フェニックス』の中にあったジーンの人格でした。
爆発的な力を持つ怒りの塊がジーンの持つ理性によって制御されたということです。
監督と俳優の絆
サイモン・キンバーグはマイケル・ファスベンダーやジェームズ・マカヴォイとの『絆』によって監督を引き受けました。
その信頼関係は本作の中でも感じ取れますね。
そして監督が本作で描きたかったのは『絆』です。
X-MENのメンバーもウルヴァリンもミュータントは全てマイノリティという運命の中に生きています。
反対しながらもチャールズに従っていたのは『絆』があったからです。
その『絆』を失ったと思ったジーンの暴走はこのテーマを浮き彫りにするためにも必要な出来事といえます。
今後の展開
ミスティークは死んでしまいましたがビーストや他のメンバーも学園に残っていたのはファンにとってうれしいことですね。
2020年4月にアメリカで先行公開された『ニュー・ミュータンツ』という作品はシリーズの第13作に位置付けられています。
Twentieth Century Foxがディズニーの傘下になって初めてのシリーズとなりました。
『恵まれし子らの学園』はジーンの名前を冠するようになってどう変わっていくのでしょうか。
本作はエリックとチャールズがかつてのようにチェスをするラストシーンでした。
彼らは登場するのでしょうか。今後の展開が楽しみですね。