出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B077D6QK51/?tag=cinema-notes-22
本作は2002年7月に起きたユーバーリンゲン空中衝突事故後に発生した殺人事件を題材とした作品です。
エリオット・レスター監督の製作指揮の元、主演にかのアーノルド・シュワルツェネッガーを据えて撮られました。
かの悲劇から15年、ジェイクとローマンを取り巻く様々な事件の背景や真相に迫る意欲作であります。
評価は余り芳しくない本作ですが、映画として本作が向き合ったものは一体何だったのでしょうか?
本稿では空中衝突の原因を中心にネタバレ込みでじっくり考察していきましょう。
また、事故を引き起こした管制官を追いかけ続けた目的、そしてラストに息子に謝罪した意味も掘り下げます。
ユーバーリンゲン空中衝突事故とは
まず本作を絞殺していく上で、モデルとなったユーバーリンゲン空中衝突事故への理解は欠かせません。
基礎知識を押さえておくと、バシキール航空2937がDHL611便と空中衝突を起こした大惨事でありました。
飛行機の空中衝突事故は滅多なことでは起こりませんが、その分1回起こると凄まじい衝撃を世間に与えます。
本作が描かれたのは事故そのものではなく事故後を巡っての被害者側の家族の感情です。
作品としてかなり際どいところへ切り込んでいる為、どちらかといえば後味の悪さが強調されています。
本作で描き出される被害者側の感情とそれに向き合う加害者側の問題はどのような結末へ繋がるのでしょうか?
空中衝突の原因
基礎知識を押さえた上で、まず空中衝突事故の要因が何であったのかを見ていきましょう。
1つの大きな事故が起こるのはその背景に様々な危険要素が積もり積もっているからです。
ここではその要素を細かく分解して考察していきます。
常態化した管制官の規則違反
まず一番の原因は管制官ジェイクが1人で2つもの画面を見ないといけなかったことです。
本来管制室は何があろうと2人1組で行わないといけないのですから、これは立派な規則違反ですね。
ましてや自分勝手な理由で休憩に入ることなど絶対にあってはいけません。
当時は今と違い航空会社側のコンプライアンスが緩く、管制官の規則違反が常態化していました。
当然こうなると指揮系統にも僅かなズレが出てしまい、不調を来して大きなズレへ繋がっていきます。
ジェイクも含む管制室全体の体たらくな仕事ぶりがこの事故の大きな原因となっているのです。
そしてそれがまた後述する被害者側の感情の元にもなりました。
電話のメンテナンスと進路変更の同時発生
2つ目が電話のメンテナンスと悪天候による進路変更が同時に起こってしまったことでした。
電話のメンテナンスも進路変更も個々の要素自体は決して何ら問題ではありません。
しかしこの2つが同時発生するとそれはそのまま連絡のタイムラグへと繋がり致命的なミスとなります。
航空業界では数秒の遅れを生んでしまってもいけないのに、それを電話のメンテナンスで5分も遅らせました。
そのせいでピッツバーグ国際空港への連絡も不可能となり、上記と合わせて指揮系統が崩壊したのです。
警告音が作動しなかった
そしてまた細かいながらも大切だったのは警告音が作動しなかったという機械の不調もありました。
これではさしものジェイクたちであっても防ぎようがなく、気づけないのも無理はありません。
更にそこに電話のメンテナンスによる連絡不足まで重なったことで衝突事故の原因は8割出来ました。