聡子自身の描写だけでなく、聡子自身の生活様式などの描写においても時代錯誤を感じられる点があります。
例えば、詐欺で大金を得た聡子は豪邸に住み、多数の家政婦を雇っており、自分で家事をしている様子がありません。
さらに、ある日は出資者達と頻繁にパーティーや会合をするなど、まるで華族を思わせるようなレトロで豪勢な暮らしをしています。
また、出資者からだまし取った金は銀行などに預ける描写がなく、どこか古臭さを感じるデザインの金庫に保管しています。
電子機器や家電・資産に関するサービスが発展した現代で考えると、少し違和感がある表現が含まれているのです。
これらの描写は、聡子の浮世離れした雰囲気を表しつつ、豊かな生活や金の量が変化することで、聡子の栄華と終わりを可視化していると考えられます。
作中に登場するインタビューシーンの意味は?
「エリカ38」には、作中の至るところで様々な境遇の人物が「インタビュー」に応じているシーンがあります。
実はこのインタビューシーンは、物語において大切な役割を持っていると考えられるのです。
渡部聡子に関する事件の概要
聡子が起こした詐欺事件に関するインタビューの様子は、作中の至るところで描かれており、事件のリアリティをさらに強調しています。
被害者だけでなく、クラブの女性・ホストなどの無関係に見える人もインタビューしていることから、周囲から見た事件の裏側を表現しているのです。
また、インタビューに応えた人物は、聡子に対する印象・聡子を目撃した時に感じたことを語っています。
インタビュー内容から話が発展していくことから、事件の起承転結をつなぐ概要としての役割を担っていると考えられるでしょう。
魔性の女・エリカの異様な人物像
ホストやポルシェへのインタビューでは、気に入った男性の望みを何でも叶えてきた聡子の様子を記者に話すシーンも存在しています。
ある日は己の欲のため、またある日は男性からの愛を得たいがために、金を浪費する「エリカ」の異様な人間性を強調しているとも考えられるでしょう。
エンドロールのインタビューが及ぼす作品への影響は?
また物語の中だけでなく、最後のエンドロールにも実際の詐欺被害者達の生の声を用いたインタビューが用意されています。
一見ただのBGMのように思えるエンドロールのインタビューですが、実は物語を考察するうえでかなり重要な役割を担っているのです。
作中の描写に対する補完
エンドロールとともに流れる実際の被害者達の声は、エリカこと渡部聡子に対する最初の印象を語るとともに、事件に対する振り返りをしています。
作中のインタビューが概要としての役割を果たしているのに対し、エンドロールはストーリーの補完という役割を果たしていると考えられるでしょう。
理由としては、詐欺行為のなかで印象が変化する「聡子の人間性」について、作中では描かれない被害者側の考え・心理がまとめられているからです。
生々しい被害者の声を映画の最後に持ってくることで、この映画が実話に基づいていることを視聴者に再認識させているのではないでしょうか。
「誰もがエリカになりうる」というメッセージ
映画の序盤において、聡子は記者に対して「自分も被害者」という言葉を言い放っています。
実はエンドロールのインタビューに出演していた被害者も、聡子に対する表現として、同じような言葉を使っているのです。