確かに、自ら詐欺行為を働く前の聡子は、クラブのホステスとして働く普通の女性であり、伊藤信子や平澤の助言をそのまま信じて行動しています。

しかしその後の聡子は、一度大金を手にしてしまった時の高揚感や、男性から注目の的となった時の悦びを忘れられませんでした。

次々と詐欺行為や豪遊に浸る「エリカ」としての聡子は、人々の心の底にある欲望・本性を体現したキャラクターであるといえます。

野性動物とは異なり、人間は普段から様々な欲望・本能を制御しながら生きているとされています。

しかし、ふとした出来事がきっかけで全ての人がエリカのような一面を発現してもおかしくないことを表しているのではないでしょうか。

「赤とんぼ」の歌の意味は?

物語の終盤に差し掛かると、これまでの派手な雰囲気から「赤とんぼ」の歌を歌う聡子をはじめ、非常に寂しげな雰囲気へと変化します。

実は、作品の終盤で頻繁に耳にする「赤とんぼ」の歌は、主人公の聡子の変化や「エリカ38」を考察するうえで、非常に重要な要素なのです。

昔の自分・家族を象徴するもの

家族

聡子は、他人よりも金や地位を信じて、ネットワークビジネスに関する詐欺を繰り返してきました。

しかし、詐欺行為の全てが明かされた後は、以前のような華やかさが消え、度々「赤とんぼ」の歌を口ずさんでいます。

この「赤とんぼ」の歌は、両親と暮らしていた幼い頃によく聞いていた歌であることが作中で表現されています。

幼いころの聡子は、母へ暴言を浴びせる父親・父におびえる母親の様子を無視するように、夢中で歌を聴いていました。

そのため「赤とんぼ」の歌は、自身の家族を象徴する歌であるとともに、現実逃避のための歌であるといえるでしょう。

ここから考えると、幼い頃は家族からの逃避、詐欺行為が明らかになった時には財産を失った現実からの逃避をそれぞれ表していると考えられます。

親子のつながりと別れ

強い繋がりがある家族

聡子の思い出の歌として描かれる「赤とんぼ」ですが、実は聡子の母親・渡部薫との交流が描かれる場面でも「赤とんぼ」の歌が登場しているのです。

歌を通して笑顔を交わす様子から、詐欺行為を始めて以降、他人をないがしろにしてきた聡子が、唯一他者との絆を感じられた場面といえるでしょう。

またその後、母親は老人ホームに預けられて二度と会うシーンがないことにより、親子のつながりを感じるとともに、別れを表していると考えられます。

また「赤とんぼ」の歌が別れを表すという考察については、警察に逮捕された際にも聡子は「赤とんぼ」を口ずさんでいたことも理由の1つです。

聡子が「赤とんぼ」を歌いながら連行される様子は、自身が築き上げてきた偽りの栄華に対する別れを表しているのではないでしょうか。

まとめ

たくさんの新聞

実際の事件に基づいた作品である「エリカ38」は、詐欺に手を染めてしまった、渡部聡子の人生を描いたドキュメンタリーという見方もできます。

また、視聴者の価値観をゆさぶる表現には、詐欺によって人生を狂わされた人々の叫びが詰め込まれていると考えられるでしょう。

金だけではなく、人からの信頼や家族との絆・人格さえも失ってしまいかねない詐欺事件の深刻さについて、様々な面から問いかけてくる物語です。

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