出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07VBK51QG/?tag=cinema-notes-22
映画『ウトヤ島、7月22日』は2018年公開のノルウェーパニック映画で、ウトヤ島で起きた銃乱射事件を題材にしています。
エリック・ ポッペ監督による本作は同時期にポール・グリーングラス監督が『7月22日』を出したことも話題となりました。
全編97分の内72分間をワンカットで撮っている為画面全体に迫力と緊張感が漂う衝撃作として本作の見所となっています。
その完成度の高さから以下を受賞しました。
第68回ベルリン国際映画祭エキュメニカル審査員賞スペシャルメンション
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ウトヤ島、7月22日
カヤという人物に焦点を当てた若者たちを襲う無差別テロの惨劇を描いた本作は果たして何を伝えているのでしょうか?
本稿では犯人の正体と目的をネタバレ込みでじっくりと掘り下げて考察していきます。
また、マグナスが将来の夢を聞いた意図やカヤの生死の真相なども併せて見ていきましょう。
ノルウェー連続テロ事件とは
さて、まず本作を考察していく上では2011年7月22日のノルウェー連続テロ事件への理解が欠かせません。
この事件は最初が政府庁舎爆破、次がウトヤ島襲撃、そして最後が法廷での主義主張の訴えという三段構成です。
本作はこの中で第二段階のウトヤ島襲撃に焦点を当ててそれに全編を費やしています。
またNetfilixで公開となったもう一つの『7月22日』は事件後の余波をじっくり描いた実録映画です。
同じテロ事件でも全くアプローチが異なるこの二つの映画を比較・検討してみるのもありかもしれません。
いずれにしても、ノルウェーで起こった戦後最悪のテロ事件として今でもその爪痕を大きく残しています。
犯人の正体と目的
本作ではカヤ視点で物語が進みますが、この惨劇を繰り広げた犯人の正体が明らかとなります。
果たして犯人は何者で、何の目的でこんなことをしたのでしょうか?
あらすじを追いながら、本編にない部分も補完しつつじっくり考察していきましょう。
アンネシュ・ブレイビク
犯人の正体は極右のキリスト教原理主義者であった当時32歳の青年アンネシュ・ブレイビクでした。
上述したように、犯人の正体が明かされたのはウトヤ島襲撃前の爆破事件のニュースだったのです。
即ちウトヤ島に来た時にはもう状況は手遅れだったわけであり、政府も警察も後手後手になっています。
最初に国のお偉方へ奇襲をかけることで対応を遅らせることが最大の目的だったのではないでしょうか。
しかもアルカイダやイスラム国のような集団ではなく個人でこのレベルのテロを起こしたのが衝撃でした。
移民受け入れ反対
アンネシュ・ブレイビクの目的は移民受け入れを行おうとする労働党へのテロリズムでした。
本編では語られていませんが、多文化主義に否定的な国家を賛美する投稿をネットでしていたのだとか。
俗にいう”ネット右翼”というもので、こういう過激思想を実行したことが極めて異例に映ったのです。
即ち一神教に極端に染まりすぎて排他的差別主義に陥ってしまった青年だったのではないでしょうか。
彼に足りないのはそうした他者への想像力・思いやりだったのです。
ウトヤ島襲撃の目的
ウトヤ島襲撃の目的は彼が逆恨みの対象にしていたノルウェー労働党青年部の者達を殺す為です。
しかも賢かったのは警察に扮して爆破テロ捜査という名目で取り入ったことにあります。