アメリカへの不満を口にし、いじけるように生活している姿は当時のアメリカの問題を風刺しているかのようです。
劇中に描かれた彼らの生き方は、いわば反面教師といえるでしょう。
人を憎むことで自分たちの居場所を見つけ、行きつく先は決闘やチノによるトニー殺害なのです。
本当にチノはトニーを殺したかったのか…。
彼らが生きることに前向きになっていたら、こんな悲劇は起きなかったのではないでしょうか。
また、大人の代表として描かれていたクラプキ巡査は人種差別や階級差別など、アメリカの抱える差別的視線を象徴する存在です。
女性の持つ強さを感じる
本作では、リチャード・べイマー演じるトニーに注目が集まりますが、マリアやアニタなど、登場する女性の強さにも注目したいものです。
もう一人のヒロイン「アニタ」
プエルトリコ出身の女優リタ・モレノが演じたアニタは、まさにプエルトリコ系アメリカ人の象徴となっています。
劇中で彼女は困難に立ち向かい、現状の中でも楽しんで生きようとしていました。
男性が荒んでいる中、しっかりと地に足をつけていた女性なのです。
また憎しみに捕らわれ続ける男性に対して、彼女は憎しみから決別しており、復讐に縛られる男性との違いが明確に描かれていました。
ジュリエットにはないマリアの強さ
マリアはアニタ同様にアメリカを受け入れ、平和的に生きることを望んでいます。
不満や憎しみを口にせず、希望や自由に目を向けているのです。
モデルとなったジュリエットは、恋人の死に殉じた悲しいヒロインでしたがマリアは単なる悲劇のヒロインではありません。
苦難や憎しみに立ち向かう強い女性なのです。
彼女が死ねなかったのは、勇気がないからではありません。
生きる力を持っていたから、ジュリエットのように後追い自殺をしなかったのです。
不朽の名作は時代と共に生き続ける
「ロミオとジュリエット」を元に制作された『ウエスト・サイド物語』は時代に沿った内容でリメイクされていました。
そして2020年、スティーヴン・スピルバーグ監督によって再び映画化されて、制作総指揮はアニタを演じたリタ・モレノが担当しています。
大勢のキャストで歌い踊るシーンがあまりにも有名ですが、名作は時代を超え、そして時代に沿って生きていくものなのかもしれません。
当時の時代背景を考慮しつつ観返してみてはいかがでしょう。