出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B0014B8AII/?tag=cinema-notes-22
『ウエスト・サイド物語』はミュージカル映画の代名詞ともなる名作です。
1957年にブロードウェイ・ミュージカルの初演を迎え、1961年に映画として公開されました。
本作はシェークスピアの「ロミオとジュリエット」をモデルに制作されていますが、ラストシーンは大きく異なります。
なぜマリアはジュリエットのように後追い自殺をしなかったのでしょうか。
劇中に登場する2つのグループを中心に名作ミュージカル映画を徹底考察していきます。
マリアが後追いしなかった理由
本作は「ロミオとジュリエット」を現代版に置き換えたミュージカル映画ですが、結末は異なります。
なぜ制作・監督を請け負ったロバート・ワイズはナタリー・ウッド演じるマリアを生かしたのでしょう。
現代版「ロミオとジュリエット」
『ウエスト・サイド物語』では、時代背景が大きく書き換えられています。
初演年度については諸説あるが、おおむね1595年前後
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ロミオとジュリエット
「ロミオとジュリエット」は上記のように16世紀のイタリアを舞台としているのに対し、本作は1950年代のアメリカを舞台としているのです。
根底に流れるストーリー性は同じでも、時代と共に観客に投げかけるメッセージは大きく違っています。
ジュリエットが死んだ理由
本作の元になった「ロミオとジュリエット」ではヒロインのジュリエットまでが死を選んでいます。
その理由は、両家の争いや憎しみによって得られるものは何もない…。
負の連鎖が続けばお互いにかけがえのない宝を失うことになる、というメッセージです。
だからこそ、お互いに憎しみあうのはよくないことだ、とシェイクスピアは語ったのです。
マリアが後追いしないことは大きな意味を持つ
ロミオとジュリエットは自ら命を落としましたが、トニーは他者によって殺されています。
自らは生きようとしたのに彼は殺されました。
みんなが彼を殺したのよ、銃ではなく、憎しみで
引用:ウエスト・サイド物語/配給会:ユナイテッド・アーティスツ
マリアのセリフは「ロミオとジュリエット」にも共通するメッセージです。
しかし、このメッセージをヒロインのマリアがいったということが大きな意味を持っています。
もし、マリアが後追いで死んでいたらアメリカへの移住者たちに絶望を与えていたでしょう。
社会的弱者の彼女が前を向いて生き、抗争に終止符を打つことが本作において最も重要な点であったと考えられます。
ラストが物語るもの
本作のラストは きっちりと和解したという形にはなっておらず、なんとなく和解するのではないか、と匂わせて終わっています。
このラストシーンには当時の時代背景が大きく関わっていたようです。
1950年代のアメリカといえば、朝鮮戦争をはじめ1959年のキューバ戦争、ジョン・F・ケネディ大統領暗殺など東西冷戦の最中でした。