日本でもお盆の時期は海難事故が多発するから近づいてはいけないとあるように、海は死への誘いとなります。

そこへアンナが本能的に引きずられるように行ったということは遠くない将来彼女に死が訪れる暗示でしょう。

極めて不吉ですが、しかしどんな人間にもいずれ死は必ずやって来る避けられない運命です。

まずはその現実をはっきりとアンナに突きつける意味があったのでしょう。

クジラ≒シャーロット・ランプリング

二つ目にこのクジラ自体が本作の主人公アンナを演じるシャーロット・ランプリングの暗喩ではないでしょうか。

メタフィクションの構造ですが、クジラは海の王者の象徴でありながらいつか必ず栄枯盛衰で死ぬのです。

これはイギリスの大女優として一つの時代を作り上げてきたシャーロット・ランプリングの運命を示しているでしょう。

映画と役者の人生とは切っても切り離せるものではなく、シャーロットの時代が一つ終焉を迎えたことを意味します。

この映画はシャーロット演じる”老夫婦三部作”の集大成として非常にこだわりをもって撮られた名シーンです。

終活

ひとり終活 不安が消える万全の備え(小学館新書)

そして何より、本作全体の総括としてこの作品がアンナの“終活”を描いた物語であることを示したのではないでしょうか。

この後演劇サークルでも結局失敗し、電車の中でも手すりにつかまって背中を丸め寂しく去って行くのです。

電車はどこへ向かうのか分かりませんが、間違いなくもう彼女はここで死に向かう決意をしていたのでしょう。

勿論彼女はこんな結末を望んだわけではないでしょうが、人生自分の理想通りにはならないものです。

だからこそ尚のこと“死”を意識させるこのシーンを象徴的に描く必要があったものと思われます。

老いと孤独

老いと孤独の作法 (中公新書ラクレ)

本作においてはアンナを通して「老いと孤独」をどこまでも暗く否定的なまでに描いています。

公式サイトには本作を「生きなおしを図る」物語と書いてありましたが、本当にそうでしょうか?

もしそうならばどこかのタイミングでアンナが前向きな決意をしてやり直す逆境が描かれるでしょう。

でもそれがなくただただ老いて一人残されていく無残な現実だけが示されているのです。

どんな人間もいずれはこうなることを示した本作には悲しいのに独特のカタルシスがあります。

まとめ

老いることの意味を問い直す (在宅・地域で生きる支える)

いかがでしたでしょうか?

本作は感情の揺れ動きが激しく描かれる映画ではなく、表向きは動きの少ない映画です。

説明も殆どなく解釈も人それぞれですが、実は一つ一つのシーン自体は然程重要ではないのかもしれません。

しかし、アンナが現実に裏切られどんどん孤独と死へ追いやられていることは間違いないのです。

しかし老いることに良いも悪いもなく、ただその現実が静かに訪れ受け入れることに意味があります。

だから本作では老いることを決して悪にはせず、かといって諸手挙げて賞賛もしていないのです。

そのような静けさの中にも老いることの様々な意味が散りばめられた奥ゆかしい作品になっています。

通常の映画の文法からは読み解けない面白さこそが本作の醍醐味ではないでしょうか。

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