出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B087NZ8WH7/?tag=cinema-notes-22

映画『ナイチンゲール』(Nightingale)は2018年に公開されたオーストラリアのミステリー・スリラー作品です。

監督・脚本はジェニファー・ケント、主演をアイスリング・フランシオシが演じています。

19世紀のオーストラリアを舞台とした白人差別への復讐劇を真正面から扱いました。

描写も非常に過激であることから評価は賛否両論ですが、その徹底した作風から以下を受賞しています。

第75回ヴェネツィア国際映画祭審査員特別賞
マルチェロ・マストロヤンニ賞最優秀新人賞

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ナイチンゲール_(映画)

始まりはタスマニア島を舞台に家族を全て失い復讐へ身を窶すクレアとアボリジニの青年ビリーの出会い。

そこから繰り広げられる二人の葛藤とホーキンスとの複雑な関係など本作ならではの見所が沢山あります。

本稿ではラストシーンでクレアとビリーが辿り着いた結末の意味をネタバレ込みで考察していきましょう。

また、ビリーがホーキンスを殺した理由や上官の前で悪行を暴露した意図も併せて掘り下げていきます。

単なる復讐劇か?

完全復讐マニュアル

「ナイチンゲール」という表向き爽やかなタイトルに反して、本筋は凄まじく重苦しい描写が続きます。

中でも全体を通した柱になっているのがクレアとビリーのホーキンスに対する復讐劇でありました。

これだけだとありがちな設定ですが、本作が違うのはそこに様々な社会問題や性差別も盛り込んでいること。

クレアは長いことホーキンスの奴隷扱いされ、更に女性というだけで謂れ無き差別・迫害を受けました。

また一見剽軽なビリーも先住民アボリジニという生まれや門地だけでずっと差別され、クレアとも中々馴染めません。

このように「社会的弱者」という共通項が土台にあるからこそ個人の情念を超えた重みのある復讐劇となるのです。

この基本構造を念頭に置いて本作の意図を読み解いていきましょう。

ラストシーンの意味

本作一番の醍醐味はラストシーンに尽きるといっても過言ではありません。

凄くストレートかつ正当な形でクレアとビリーのホーキンスへの復讐がなされたのです。

果たしてこの結末に込められた意図は何なのでしょうか?

奴隷解放

エイブラハム・リンカン―「奴隷解放宣言」を発して奴隷制度を廃止し、民主主義の指針を示したアメリカの大統領 (伝記 世界を変えた人々)

まず社会的弱者という観点から見ると、ラストの結末は奴隷解放のカタルシスを意味しています。

本作のホーキンスは只のブラック上司というだけではなく、イギリスによる植民地支配の象徴なのです。

一見クレアとビリーの怨恨のようでいて、その背景にあったのは二人が不当に受けてきた差別でした。

ホーキンスを倒すのはただの復讐ではなく、彼の独裁政権から民衆を解き放つことに繋がります。

それは本作におけるオーストラリアが国全体として抱えていた想いでもあるのです。

復讐を”飲み込んだ”二人

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二つ目に勝利の踊りに象徴されているのは二人が復讐に”飲み込まれた”のではなく”飲み込んだ”ことです。

クレアとビリー、二人ともホーキンスへの復讐を動機に後半は動いていましたが、昇華の仕方が違いました。

クレアは物語開始から復讐心を持っていましたが、ビリーはクレアと行動を共にする中で復讐心を増大させます。

その中で二人はお互いの中に「復讐」があることを見出して自身を投影したのではないしょうか。

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