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映画『テルマ』はノルウェー発のホラー作品で鬼才ラース・フォン・トリアーの親類ヨアキム・トリアー監督が手がけました。
キャストはエイリ・ハーボーを主演として、演出も非常に独特のタッチで描かれており高く評価されています。
2018年にはクレイグ・ギレスピー監督によるリメイクの制作が発表されたことからも人気の高さが窺えるでしょう。
あらすじはノルウェーの田舎町で育ったテルマが成長してオスロの大学へ行き、アンニャと惹かれ合う所から始まります。
しかし、少女時代の記憶がない彼女にはその時から異変が起き、周囲が不可解な出来事に巻き込まれていくのです。
今回はラストでテルマがアンニャと再会できた理由をネタバレ込みで考察していきましょう。
また車椅子だったウンニが歩けるようになった理由や父が燃えた意味と弟の死の真相なども読み解いていきます。
“非常識”から”常識”を問う
まず本作が全体を通してテーマに持っているのは“非常識”から”常識”を問う、即ち覆す物語です。
設定や展開だけを見れば超能力や両親と子の異常な家庭、そして禁断の同性愛など過激に思われます。
しかし、それらは手段であって本作を考察していく上での本質にはなり得ません。
中心で描かれているのはあくまでも少女・テルマの精神的自立であり何も難しくはないのです。
大事なのはテルマがその精神的自立を果たす為にどんな苦悩・葛藤を抱いてどう乗り越え何を得たのか?
本稿ではそこを改めて明確に指摘し読み解いていきましょう。
ラストでアンニャと再会できた理由
本作のラストではあらゆる苦悩・葛藤を乗り越えたテルマが大学のキャンパスでアンニャと再会を果たします。
非常に温かくもあり、またある種の不安・切なさもそこに感じられるラストですがなぜ再会出来たのでしょうか?
あらすじを踏まえつつ、このラストの本質に迫っていきましょう。
潜在意識の具現化
まず本作全体に共通していえるテルマが持っていた超能力の中身は「潜在意識の具現化」ではないでしょうか。
これはアンニャとの再会に限らずウンニが歩けた理由も父が燃えた意味も、そして弟の死の真相も全てこれです。
単純に願いを叶えるのではなく、テルマが潜在意識の部分でこうだと思ったことだけを形にしています。
だからこそ決してご都合主義的な便利道具ではない形でアンニャとの再会を果たすことが出来たのです。
本作における超能力は凄く具体的で我々の日常生活の感覚と非常に近い所にあり、胡散臭さを感じさせません。
性格と生き様が正反対
二つ目の理由としては二人の性格と生き様が全くの正反対であることも大きく影響しています。
小さい頃から両親、特に父に虐待紛いの抑圧を受けてきたテルマはどうしても人の目や体裁に意識が向く人です。
対してアンニャは逆で自分が楽しいと思うかどうかを基準として気ままに生きることをモットーにしています。
酒やタバコだって大人のたしなみとして決して悪いことだと思っていないし、同性愛にも全く抵抗がありません。
二人が最初にキスしたときも同じで積極的にアプローチをかけてきたのはアンニャの方でした。
単に惹かれ合うだけではなく、何よりも二人が正反対であったことが結果的に良い方向に作用したのです。
自立の証
そして三つ目にアンニャとの再会や同性愛はテルマにとって自立の証だったのではないでしょうか。