彼はタイプミスのない暗号文をわざとイギリスへ送らせ救援要請を出したのです。
更に惚れ込んだリンを助けようというやや下世話な目論見もありました。
甘い人と思われている隙の多さを逆手に取った作戦だったのでしょう。
自らの甘さを武器に変える、正に嘉藤ならではのスパイとしての作戦でした。
三好の受け売りと伏線
二つ目に彼が用いた二重スパイと母親が居るから死ねないというのは三好の受け売りにして伏線なのです。
そう、単に嘉藤をスパイとして覚醒させるだけではなく上述した三好の正体の伏線にもなっています。
この前振りが丁寧に機能しているからこそ終盤に来る三好の二重スパイの落ちが活きるわけです。
勿論嘉藤自身はそんなことを計算していたわけではないでしょうが、結果的には三好を上手く引き立てました。
双方の格を落すことなく嘉藤の成長と三好の伏線を一石二鳥の形でやり遂げた驚くべきシーンです。
でも直後にドジをやらかす
しかし脱出直後、惚れた弱みという奴でまたもやリンを助けにかかって裏切られてしまいます。
キャンベルにまで同情されますが、これはもはや嘉藤がバカとしかいいようがありません。
その後停電によってピンチを凌いだのですが、リンが助けたのは単に借りを返しただけです。
ある意味でルパンと不二子ちゃんみたいですが、ここのアクションシーンは中々面白く仕上がっています。
でも写真は大切に取っておきたいという辺りリンも満更ではないようです。
このシーンがあるからこそ一連のシーンが面白く仕上がっているのではないでしょうか。
ジョーカーは常に裏で動く
本作はスパイ映画として見ると正確さには欠けているかもしれませんが、一つ面白い発見があります。
それは「ジョーカー」(切り札)というか真に優秀な人材は常に裏で動くということです。
D機関はそういう「ジョーカー」の育成機関ですが、結城中佐と三好はその中でも真のジョーカーでしょう。
そして何より昭和時代にそうやって裏で活躍する者達がいたということに衝撃と感動があります。
もしかしたら日常の直ぐ傍にこそそういう「ジョーカー」は居るかも知れません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本作は原作と違いすぎて、こんなのは「ジョーカー・ゲーム」ではないという意見もあるかもしれません。
しかし、下手に原作再現を選ぶよりも原作とは別のものにする道を選ぶのもありではないでしょうか。
本作はいわゆるスパイ映画のベースを使いつつ、しっかり破綻のない話に仕上がっていました。
特に殆ど出ていない三好にあれだけの存在感で落ちを持って行かせたのは驚嘆に値します。
続編を匂わせるような結末でしたので、もしかしたらその構想もあるかもしれません。
いずれにしてもまだまだ化ける可能性を秘めたダイヤの原石のような作品であることは間違いないでしょう。