金ヶ崎の戦いは孫子の説く「凡そ戦いは、正を以て合い、奇を以て勝つ」を実践したものでした。
まず3人の影武者を用意することでストレートに正攻法を、といいますか陽動作戦を仕掛けます。
ですが、それはあくまで目眩ましに過ぎず今川軍にババを掴ませているに過ぎません。
そして偽者に目が泳いでる最中に本物は裏からこっそりと弱みを握って仕掛けるのです。
決して正攻法だけでも奇策だけでも勝てず、その両方のバランスを持ってこそ勝利を手に出来ます。
3人もいる理由
最終的に影武者共影武者で真打ちは別に居たことが判明しましたが、なぜ3人だったのでしょうか?
それこそ影武者を作るだけなら4人でも5人でも幾らでも増やせたはずですし、最悪1人でもいいでしょう。
そこを3人にした理由をあらすじや性格面などから読み解いていきましょう。
ものまねの面白さ
まず1つには単純に癖から何から影武者に徹底してものまねをさせることの面白さがあります。
たとえば背中の傷や銃の痕、猫アレルギーなど細かな癖まで完全に形態模写といえるレベルです。
それでいて3人の性格自体は頭が切れるタイプと貫禄のある天然と達観したうつけ者とまるで違います。
この全く性格の違うイケメン武将達がこぞって信長を真似ていること自体が面白いのです。
そしてこの面白さが即ち本作を時代劇ではなく時代劇コントに仕立てている所以ではないでしょうか。
復讐心に迷いを生じさせる
2つ目に3人にすることで今川軍の復讐心を分散させ迷いを生じさせることが出来ます。
これが1人か2人ならば下手をすればシリアスな時代劇として成立していたでしょう。
しかし、その復讐の対象が3人になれば影武者か妖術使いかと上を下への大騒ぎとなります。
そうなれば今川軍達もミイラ取りがミイラになったように復讐心よりも誰が信長かに関心が向くのです。
つまり敵の戦意をなるべく崩して殺いでおくことで真打ち登場の地均しをしておいたのではないでしょうか。
本物の信長の顔を見た者が居ないから
そしてこの作戦が有効だった最大の理由は今川軍に本物の信長の顔を見た者が居ないからです。
今まで破れていった敵の将軍や兵達は皆本物の信長を見ることもなく影武者に殺されてきたのでしょう。
それにより本物の顔が判明しておらず、影武者作戦が通用しやすい状況にありました。
そこを織田信長の兵達は上手く利用して敵の虚を突く作戦へと打って出たのではないでしょうか。
ギャグじみた作戦でも筋は通ったものなので全く破綻していません。
今川軍が打った策
非常に用意周到とも奇を衒ったとも取れる予想外の作戦で想定外の打撃を食らった今川軍。
彼らは最後まで惑わされていましたが、本物を特定する為に彼らはどんな策を練ったのでしょうか?
信長の癖を利用する
1つ目が上述していますが、信長の癖を利用して本物を炙り出すことです。
背中の傷や銃の痕、猫アレルギー等々細かな所までかなり癖を調べ上げています。
これで大抵の場合影武者であっても偽者だと簡単にばれてしまうものです。