まず最初の段階が神からの招待を意味していたのではないでしょうか。
とはいえその神様とは上記したように人類に絶望をもたらす破壊神という最悪の神様です。
もしここでダニエルズ達が信号を受け取らず不用意な動きをしなければ深みにはまらず済んだでしょう。
ですが、その原因がかつて10年前に地球から旅立った宇宙船ということが決定打となりました。
この時点でダニエルズ達船員の地獄の運命は決まっていたのかも知れません。
誓約
二つ目にこの信号はダニエルズ達コヴェナント号と破壊神デイヴィッド達との誓約でしょう。
コヴェナントとは「神との誓約」という宗教的な意味合いが非常に強い単語です。
ですがここで皮肉だったのはその神様が本物の神様ではなくアンドロイドという偽の神様だったこと。
ついていく神様を間違えたわけであり、かといって一度深みにはまれば抜け出すのは難しいのです。
ましてやそれがかつての人間達がやって来た所業の果てとあっては尚更のことでしょう。
罪と罰
こうして見ていくと、この信号とは実質ダニエルズ達人間が向き合うべき罪と罰ではないでしょうか。
ショウ博士がそもそも人類の起源を探るなんて神の禁忌に挑む真似をしなければ良かったのです。
デイヴィッドが出過ぎた真似をしたのは全てショウ博士が出過ぎた真似をしていたことにあります。
だからこそその罰を10年越しにダニエルズ達人間側が代償として払う形になったのです。
何とも不条理で理不尽ですが人間の業の深さと向き合うことはいずれ避けられない運命だったのでしょう。
ここで示されている本当の意味は「罪と罰」なのかもしれません。
真のエイリアンは人の心
ここまで様々に考察してきましたが、詰まるところ真のエイリアンは人の心ではないでしょうか。
デイヴィッドやエイリアンは膨れ上がった人の心が膨れ上がった結果現実化したものです。
思考は現実化するとよくいいますが、逆にいうと現実世界は人間の思考の映し鏡となります。
つまりエイリアンとは結局デイヴィッドの創造主ショウ博士の心の暗黒面が産み出したものでしょう。
だからこそ本作では作品世界と現実の双方に”産みの苦しみ”という特徴が浮き彫りになるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本作は色々な意味で産みの苦しみを伴う何とも難産な作品でありました。
それ故に評価はどうしても低くなりがちですが、決して無視していい一作ではないでしょう。
リドリー・スコット監督は自らが産み出した作品の根源に禁忌を犯してまで向き合おうとしたのです。
そしてラストの結末では人の心がそういう化け物達を産み出させたのだと明らかにしました。
そのような観点で見ていくときに本作はまた違った顔を出すのではないでしょうか。