彼が北海道にやって来たのは東京でのサラリーマンとしての無味乾燥な生活に疲れ果てたからでした。
つまり生きることの意味を見失っていた神戸の中で初めて生きることと食することが一つに繋がります。
それは即ちややぶっきらぼうだった彼にキャラクターとしての芯が芽生えた瞬間なのです。
このシーンがあればこそ終盤で神戸が亘理を励ますシーンに説得力が出るのではないでしょうか。
亘理達の仲間入り
二つ目に神戸が無事に亘理達の仲間入りを果たし迎え入れられたことを意味します。
それまでどこかずっと孤立して牧羊をしていた彼は頑なに人を受け入れようとしませんでした。
ですが、仲間たちが一緒に持ち寄った食材をブレンドすることで見事な料理が出来上がります。
ここで料理によって食材がブレンドすることと食材を生んだ仲間たちが繋がるのが憎い演出です。
そしてこの仲間入りがもう一つ素晴らしいアイデアへ繋がります。
一日限定レストランの予祝
真の意味はラストシーンの一日限定レストランへの予祝にして伏線になったことです。
こうして食べ物をブレンドしてみんなで幸せを分かち合うことを亘理と仲間達は知りました。
だからこそ一日限定レストランという素晴らしいアイデアをひらめくことが出来たのです。
もしここで神戸が参加せず羊の美味しさを知らなかったらこのアイデアは生まれなかったでしょう。
神戸の存在は正に新しい幸せを食を通してもたらしたことになるのです。
苦しみ悩んだ先にこそ真の幸せがある
本作を含むシリーズ三部作の真のテーマは「苦しみ悩んだ先にこそ真の幸せがある」ではないでしょうか。
単に食の良さや素晴らしさという「光」だけではなくその過程で様々な苦悩・葛藤という「影」もありました。
しかしその「影」から逃げず立ち向かったその先にこそ真の幸せや喜びが感じられるのです。
俗にいえば苦あれば楽ありですが、その表現するのが難しいテーマを実に鮮やかに再現してみせました。
食を通して人生の様々な苦しみや悲しみを乗り越えて真の幸せを手にして分かち合うことの素晴らしさ。
それはいつの時代も決して滅びることのない普遍的な魅力でありましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本作は『しあわせのパン』『ぶどうのなみだ』から続いてきた物語の集大成に相応しい一作となりました。
それは同時に大泉洋という一人の俳優が本作をもって一つの完成を迎えた証でもあるでしょう。
食の魅力を北海道という自然の豊かさと共に絶妙な演出と脚本で彩って伝えてくれました。
そして何よりも「幸せを分かち合うこと」をモットーにした本作の魅力はより多くの人へ伝わる筈です。
そのように見ていくと当たり前ながらも凄く広がりや豊かさが多く感じられる作品ではないでしょうか。
国を超えて評価が高いのも納得の実によく出来た名作です。