だから三宅に渡せばそのデータの改竄をまたもみ消されてしまうことになるかも知れません。

そうなると今までやって来たことが諸共崩れてしまい幸次の復讐は破綻してしまいます。

あくまでも幸次は幸次の意志で動いていることを示したのです。

父の潔白を証明したかった

潔白 (幻冬舎文庫)

二つ目に何が何でも父の潔白を証明したかったのではないでしょうか。

ちょっとした大手メーカーの不正を暴いたつもりがかえって自社を倒産へ追い込んだ末に自殺した父。

家族を巻き込んでしまったとはいえ父がやろうとしたことは責めを負うべきものではありません。

ですが、世の中には立場が上の者を下手に追い込むと自分の身が滅びるという理不尽があります。

その理不尽が許せなかったからこそ幸次は復讐を決意し父の潔白を証明しようとしました。

彼の復讐の対象は何よりもその「世の中の理不尽」だったのではないでしょうか。

理性の決壊

決壊(上)(新潮文庫)

そして三つ目にこの段階に来るともう幸次の理性が決壊し復讐のみが暴走したことを意味します。

マスコミに訴えようとしてもダメで、かといって資料を返せば都合良く利用されるのが関の山です。

だからこそもはや話し合いの余地がないまま殴る蹴るの暴行へと発展したのではないでしょうか。

まだ殺さなかっただけマシですが、一歩間違えれば彼も北村のようになってしまいます。

そのような「客観性=理性」の象徴である資料を持たない幸次という境地を示したのでしょう。

超えてはならない”一線”がある

一線

本作の北村と幸次の暴走が示すことは人には超えてはならない”一線”があるということです。

決して彼らのいうことが正しいわけではないし間違っているともいいきれません。

正義や善悪は常に時代性と立場によって案外簡単に変わってしまうものだからです。

しかし、どんな時代であろうとどんな行動であろうと守るべき”一線”はあります。

北村も幸次も目的は立派ですがその手段が犯罪行為では本末転倒でしょう。

このようなやり方でなくとも奈々を守ることも父の潔白を証明することも出来たはずです。

第二・第三の北村・幸次にならないよう我々は気をつけなければいけません。

まとめ

悪と全体主義―ハンナ・アーレントから考える (NHK出版新書 549)

いかがでしたでしょうか?

本作は割り切れない善悪と正義へ挑んでますが、ありきたりなレトリックは用いられていません。

復讐を果たして誰かが喜ぶのか、北村達のやったことが間違いなのかは述べられないままです。

しかし一度人としての道を踏み外してしまえばそこにはもはや正義も善悪も何もありません。

待っているのは孤独と自暴自棄、果ては自滅という悲惨な末路のみです。

そしてそれを生み出しているのは他でもないこの社会に住んでいる我々人間ではないでしょうか。

そのことをありありと画面で見せつけた本作は鋭く社会を批判する尖った傑作でありましょう。

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