また、手でピストルを作ることでひったくり犯を威嚇。銃を撃つマネで「シカゴの死神」を意識させ、犯罪を自粛させようとしたのです。
悪事に対する意識の変化
「目には目を、歯には歯を」という言葉があるように、復讐は新たな悲劇を生みます。
模倣犯による悲劇を目にしたポールは、銃を手にする危険性を改めて感じたのかもしれません。
銃を撃つフリは命の奪い合いに発展するような危険行動ではないのでしょう。
銃を手放し命の奪い合いからは手を引いたという意思表示も、この行為には含まれていたように感じられます。
警察や街の変化
本作は国で一番犯罪が多い街という滑り出しで始まるものの、決して警察が機能していないわけではありません。
町全体を警察が守り切れない事実を突き付け、自衛・自警の念を意識させることが目的なのです。
死神が市民に与えた影響
「シカゴの死神」はSNSを通じて広がり市民の自警に対する意識を上昇。
メディアでの賛否両論はあるものの、犯罪に対する抑止力のシンボルとなりました。
象徴としての死神の存在は、ポール・カージーがその役目を終えた後も人々の間で生き続けます。
警察だけが正義ではない、自分たちの身は自分たちで守るという意思を人々に与えた陰のヒーローとして彼の存在は語り継がれるのでしょう。
警察も黙認した必要悪
殺人容疑で死神を追っていたレインズ刑事は、ポールの行動と手の怪我から彼が「シカゴの死神」であると確信していました。
逮捕するか否かの瀬戸際のタイミングで起こる、ノックスによるカージー家襲撃事件。
娘を守るために自衛したポールをレインズは被害者として結論づけてカージー家を去ります。
その場での証拠が無くとも、ポールの手の傷や行動記録、動機から「シカゴの死神」を逮捕することはできたでしょう。
しかし、レインズは彼の行動を認め、全ての行動に目をつぶりました。
彼もまた、ポールの働きが警察を含む街全体が変化するための必要悪だと判断したからこそ、彼の捜査から手を引いたのでしょう。
リベンジ映画に求めるのはハッピーエンド
「デス・ウィッシュ」は、チャールズ・ブロンソンが主演の「狼よさらば」のリメイク作品として生まれた作品です。
本作ではチャールズ・ブロンソンが演じたポール・カージーの設定を大幅にチェンジ。
ホラー・スプラッターの金字塔とも名高いイーライ・ロス監督とは思えない気持ちのいいハッピーエンドで締めくくられていました。
主演が変わったことでキャラクターのイメージも変化しており、なんともブルース・ウィリスらしい作風に仕上がっていたのも印象深いところ。
丸ごと生まれ変わった映画は、もやはオマージュ作品といったほうが適切だと思うほど素晴らしい作品へと変貌していたのです。