せっかく勇気をもって鉄平をかばってくれた女性を追い出した駅員の行動は不可解でした。

丁寧な取材と実話による裏付けで映画化に踏み切った周防監督ですからそこは演出ではないと推察できます。

だとしたら『慣れ』や『無責任』で人生を変えられたことになるのです。

マニュアル化された行動パターン

証言台で本人が語っていますが、駅員の行動は細かくマニュアル化されています。

逆にいうとマニュアルに無いものは対応不可なのです。

彼らに臨機応変のスキルは求められていませんし、むしろ禁じられていることなのでしょう。

痴漢行為の申告があれば『犯人を確保』して『警察に通報』することがルールです。

事情を聴くとか状況を把握するという行為はマニュアル外となるのでしょう。

ある意味この駅員は職務に忠実だっただけです。

痴漢事件は日常茶飯事

もしも鉄平が駅員室に入った時に事情を聴くなり状況を把握する行動を起こしていれば判決結果は違っていたかもしれません。

しかし彼ら駅員は毎日同じような出来事を処理しているのです。

もはや流れ作業に近い感覚で鉄平を警察に引き渡している駅員に記憶を辿れという方が無理なのかもしれません。

控訴審で勝つとしたらこのパターン

痴漢「冤罪裁判」(小学館文庫)-池上正樹-ebook

おそらく鉄平の控訴は棄却され上告は叶わないでしょう。それが日本の現実です。

鉄平の刑は確定し彼の憤怒は行き場を失うことでしょう。

しかし控訴審で逆転勝訴する可能性もゼロではありません。

それは真犯人を見つけ出し自白させることです。

例えば毎日同じ電車の同じ車両に乗り続け痴漢行為を待ち続けるという方法があります。

もしかしたら元カノがその役を買って出るかもしれません。

しかし逆転勝訴の可能性は限りなく低いでしょう。

周防監督が映画化したかったテーマ

それでもボクはやってない―日本の刑事裁判、まだまだ疑問あり-周防-正行

刑事訴訟における控訴審では「やむを得ない事由」がないと新しい証拠は取調べてもらえません。

これは刑事訴訟法382条の2と393条第1項を適用した理論であり、これを根拠に被告側の証拠申請を全て却下するのが通例です。

しかし検察側の証拠申請は認めることが多いため明らかな不公平が横行していることになります。

ここに司法の闇があるのです。

本作にも出てきますが人質司法という言葉も看過すべきではないでしょう。

明日は我が身かもしれない痴漢冤罪事件を通し、当事者でなければ知ることができない事実を知らしめるのが監督の目的です。

警察や裁判所という我々が『正義の味方』だと思っている存在の問題点を白日の下に曝すのが本作の狙いではないでしょうか。

『それでもボクはやってない』は社会派映画の名作です。

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