しかしそれはパンドラが行った無邪気な好奇心とは違い、避難の道中にメラニーが経験し知り得た真実から出した結論だといえます。
それではその結論に至るまでの点をヒモ解きながら考察してみましょう。
博士はなぜベビーカーを覗いたのか?
メラニー出生の真実
メラニーはコールドウェル博士から出生の秘密を聞き、自分も母親を食い破って生まてきたのだと知りますがそのことに特別な感情はありません。
どちらかといえば自分は他のハングリーズとは違い「特別」な存在という意識が強く、移動中も多くの知識と知恵を得ていたことがわかります。
博士は施設の子供達やメラニーの出生経路を知っているがゆえに、同じような状況で生まれた子供こそが「人類を救う希望」だと考えています。
博士の飽くなき探究
博士はメラニーが発見されたことで、真菌に感染した母親から産まれた子供は病原体の影響を受けないことを発見しました。
つまり感染した母体から生まれた新生児は、博士にとって特に大きな関心をもたらす対象になるのです。
人類を救うワクチンの開発が最優先と思い続けてきた博士には、常に他にワクチンにつながるものがあればという意識が強かったのでしょう。
うごめくベビーカーをみつけた時は病原菌に対する抗体を持った赤ん坊が、生存しているのではないかと覗かずにはいられなかったのです。
火を放ったメラニーの真意
箱の底に1つだけ残ったものは?
メラニーは彼女と同様の子供達で集められた研究所に収監され、その中でも最もIQの高い「特別な子」として一目置かれていました。
それは悪い事に立ち向かわせてくれる「ワクチン」という希望になると思われていたのです。
メラニーを主成分にして早急にワクチンを作りたい博士は、ヘレンを持ち出し説得を試みるもその上をいったのがメラニーでした。
移動の道中での経験や本との出会い、博士の病原体の解説やパークス軍曹の行動からあらゆる知識を吸収し予期せぬ成長をしたのです。
ハングリーズと人間
メラニーは病原菌に感染した人間だという意識で生き、一緒に逃げてきたヘレン達と生きて共存できることを模索しながら協力して行くのでした。
しかし、メラニーは街を探索し人間の営みを知れば知るほど次第に“ハングリーズ”という種の自意識が濃く芽吹いていくのです。
そして、このコールドウェル博士との会話で、“人間のために”と感じとったメラニーはハングリーズとして完全に覚醒したのです。
「今でも“人間を観察して真似するだけの実験体”だと思ってる?」
「いいえ…」