しかし、実際に見つけたのはヒョーガヒョーガ星人たちが作り上げたと考えられる古代遺跡。
南極大陸で目的と違ったものを発見してしまう冒険の流れは、クトルゥフ神話の1作目と言われる「狂気の山脈にて」と同じです。
原作と大きく違うのはホラー要素の高い「狂気の山脈にて」に比べ、ドラえもんでは幻想的で美しいシーンが多いところでしょうか。
あらすじは類似していてもストーリーと演出の違いで子供向けの美しい作品に仕上がる辺り、ドラえもんに対する監督の愛を感じます。
何故ドラえもんにクトゥルフ神話を取り入れたのか
「クトゥルフ神話」は、現実では信じられないような物語を詰め込んだ恐怖神話です。
神話と名づけられているものの、ふたを開けてみたら地球外生命体の存在をほのめかすホラーストーリー。
高橋敦史監督は、なぜこのような恐ろしい神話を子供向けのドラえもん映画のベースにしようと思ったのでしょうか。
大人も惹き込む世界観の確立
理由の1つに考えられるのが、大人も楽しめる映画の確立です。
独自の神話形態をとっている「クトゥルフ神話」は、幻想的な設定からゲームにもよく使われています。
カードゲームやデジタルゲームとして使われることが多いので、原作の設定やモンスターを知っている大人が多いのがポイント。
子ども向け映画を一緒に見る大人も楽しめるように、「クトゥルフ神話」を元ネタとして取り入れた可能性が考えられます。
恐怖神話の概念
神話というのは、少なからず宗教的概念が生まれる素材となります。
ドラえもん映画というと、普段は対立関係にあるジャイアントのび太が協力し合う友情物語が描かれるのが常。
しかし、今回の映画ではのび太の主張がかなり強く描かれているのがポイント。
10万年前のリングを返しに行くという現実離れした思考は、古代文明に操られていたのでは無いかとも考えられます。
恐怖神話をベースにしていると考えると、純粋な冒険心や親切心も洗脳疑惑に置き換えられるのが面白いところです。
新たな視点で書き上げたオリジナルストーリー
劇場版ドラえもんシリーズは、しばしば小学生向けの冒険譚をベースに作られてきました。
原作自体が子供向けの文学作品であることから、最初から夢と希望が詰め込まれているのが特徴。
宝探しに行こう!という流から始まるものが多い中、10万年前の落とし物を返しにいこう!という始まり方は異例ともいえるでしょう。
リメイク作品も多い新ドラえもんシリーズにおいて、本作は完全オリジナル作品として注目を集めた作品でもありました。
ホラー寄りの「クトゥルフ神話」の要素を強く取り入れたあたりには、シリーズに新たな風を取り入れたいという意味もあったのかもしれません。
偽ドラえもんは何者だったのか
偽ドラえもんは、神殿の守護石造が姿を変えた存在です。