まずここでクラレンスはジョージのピンチをプラスに転じることを思いついたのでしょう。
資産運用のノウハウ
二つ目に「お金」と絡めるなら、トムとハックが財宝探しに出た結果6%の資産を山分けした話もあります。
即ち元が盗品であっても苦労して手にいれた宝の報酬だからトムとハックの資産となるのです。
子供ながらに強かな資産運用や不労所得での暮らし方などの現実的な経済の話が盛り込まれています。
こうした大人の現実を子供の冒険に織り込んでいるのも天使に影響を与えたのではないでしょうか。
人生何だかんだ生きていくには元手となるお金が必要ですから、その意味でも勉強になります。
やったことは失敗ではない
そして三つ目に、ジョージの生き様がどこか著者のマーク・トウェインに似ていることです。
『トムソーヤの冒険』の著者マーク・トウェインは資産家でありながら投資の失敗で一度自己破産しています。
そんな彼の持論は「20年後に失望するのは、やったことよりもやらなかったことだ」です。
ジョージの生き方は失敗こそしても「やらなかった」ことはなく、それがマーク・トウェインに被ります。
だからこそ、表面上自殺に追い込まれるほどの失敗に思われた8000ドルの損失も決して大きな損失ではありません。
実際その後V字回復で妻が中心となっての街全体の寄付でV字回復したのですから。
それこそが何よりも天使が「トムソーヤの冒険」を読んで受けた影響ではないでしょうか。
「稼ぎ方」ではなく「使い方」
本稿をこうして考察していくと、大事なのはお金の「稼ぎ方」ではなく「使い方」にあるといえるでしょう。
政治家の賄賂や汚職事件などを見て「汚いお金」といいますが、お金そのものに綺麗も汚いもないのです。
もし綺麗や汚いがお金になるならそれはそのお金をどのように使ったか?の方ではないでしょうか。
実際ジョージは金額の多寡に関係なく大事なお金の多くを街の為に投資して回していました。
一方のポッターは如何に人から牛耳って自分が稼ぐか、得をするかしか考えていません。
ですが、その結果は物語の最後に寄付金という形でジョージの手元に戻ってきたのです。
このシビアな資産運用にこそその人の人となりが出るのであり、ジョージは正に「使い方」の綺麗な人でした。
今の時代にこそ見るべき名作
いかがでしたでしょうか?
このように見ていくと、本作は終戦後直ぐの作品にも関わらず現在にも通じる人の生き方を説いています。
それも単なる精神論や教訓じみたものではなく、現実的なお金の資産運用にまで踏み込んだ生き方です。
ジョージという人間は自分の欲を押さえて他者の為に惜しみなく投資することが出来た人でした。
だからこそ自分がそのことで損して傷ついても、周りの人を幸せにし自分も幸せになれたのです。
お金持ちというと世間のイメージはポッターのような成金じみた人かもしれません。
ですが、本当のお金持ちは寧ろジョージのように他者の為に積極的に投資出来る人です。
そんな生き方の出来る素晴らしい人生を受け手にも送りたいと思わせる不朽の名作ではないでしょうか。