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映画『GAMBA ガンバと仲間たち』は斎藤惇夫の児童文学作品をベースに2015年に制作・公開された作品です。
原作は『冒険者たち ガンバと7匹のなかま』で、監督は河村友宏・小森啓裕が担当しています。
あらすじは至ってシンプルで、町ネズミのガンバとマンプクが1匹の島ネズミと出会い困難に立ち向かう物語。
ネズミの少年・忠太との出会いや敵であるイタチ軍団との戦い、ノロイとの対決など王道的な要素がてんこ盛りです。
本稿では5人の新たなる冒険をネタバレ込みで考察していきましょう。
また、ガンバの登場が戦いに与えた影響やノロイとの対決の決意にも迫ります。
昭和アニメ版との違い
本作を語る上で外せないのはやはり出崎統監督が1975年に2クールかけて制作された昭和アニメ版です。
こちらはノロイが最凶のイタチであり、ネズミ達は決してヒーロー性が強くなく等身大のキャラで描かれました。
またエンディングテーマが非常に物悲しく、当時の作品としては冒険活劇にただの終わらない切なさが感じられます。
一方で本作はキャラデザインから一新し、ガンバが等身大のキャラではなく「桃太郎」のようなスーパーヒーローです。
冒険活劇は同じでも、昭和アニメ版の切なさや重苦しい感じはなく、明るく爽やかな子供向けの作風でまとまっています。
そんな本作が新たに生み出されたこの作品は何を受け手に伝えようとしているのでしょうか?
5人の新たなる冒険
ラストでノロイ達イタチ軍団を倒した5人の勇者ガンバ・ヨイショ・ガクシャ・イカサマ・マンプク。
5人は忠太や潮路達との別れを惜しみながらも新たなる冒険に旅立ちますが、果たしてどんな冒険でしょうか?
原作のテーマや物語の流れも踏まえつつ考察していきます。
種族差別の解放
まず本作のテーマとして盛り込まれているのが、ネズミとイタチの間で起こった種族差別による支配です。
ラスボスのノロイはアニメ史上屈指の悪逆非道な名キャラですが、一方で独自の美学・美意識もありました。
それが白く美しい色のものを自身の白色の体も含めて愛でるというもので、これは即ち白人至上主義の象徴でしょう。
そして薄汚いとされるネズミ達はさしずめ黄色人種と揶揄され、世界の中でヒエラルキーが低い日本人の象徴です。
そう、ここから本作の背骨には種族差別からの解放が裏にあることが窺え、その為の冒険に出たのではないでしょうか。
ボーボの弔い
2つ目に終盤でイタチ軍団との戦いで殉職したボーボの弔いの旅という意味もあるのではないでしょうか。
彼は命を賭して幼く非力な忠太から守るために単身覚悟を決めてイタチ軍団に立ち向かい、その命を散らしました。
ボーボの死はガンバをはじめネズミたちの心に深く刻まれたに違いなく、彼の死の上に勝利が成り立っています。