とは言っても、これは捜査官としてイザベルを騙すための手口だった、という疑念が残ります。それは次のシーンで消え去りました。
イザベルとの約束2:逃げ出したイザベルを見つけたとき
イザベルを護送しているときに、カルロスが雇ったであろう暗殺者と買収されたメキシコ警察に追われます。
その時イザベルが逃げ出してしまいますが、後を追ったアレハンドロはイザベルを敵の手から奪還しました。
君の身は安全だ
引用:ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ/配給会社:コロンビア映画
捜査官に扮したときと同じような内容ですが、この言葉をスペイン語で言います。
もともとコロンビア出身のアレハンドロとメキシコ出身のイザベル。この二つの国の公用語は、スペイン語です。
捜査官の時は英語で語りますが、これをスペイン語で言うことで自分をさらけ出す意味合いが込められています。
つまり、アレハンドロは本気でイザベルを守ろうとしたのです。
復讐は終わっている
アレハンドロがCIAの命令をマットから聞いた後、イザベルはアレハンドロの過去を知っていることを語りました。
つまりイザベルは、自身の父親の命令でアレハンドロの妻子が殺されたことを知っているのです。
そして父親がアレハンドロの妻子を殺したことを伝えると、アレハンドロは意外な返事をイザベルに返します。
お父さんの手下だ
引用:ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ/配給会社:コロンビア映画
手下というのは、先述した前作『ボーダーライン』で登場するファウストのこと。
つまりアレハンドロが言いたいのは「手下が自分の妻子を殺したのであって君の父親じゃない、だから気にするな」と言いたいのです。
このセリフから、アレハンドロは最大限イザベルに対して気を遣っていたのだと思われます。
少しでも傷つくようなことは言いません。
CIAからの命令があっても、イザベルは殺さないと誓ったアレハンドロの優しさが見られたシーンでした。
親であったことを思い出す
アレハンドロがCIAからイザベルを殺す指令を受けたのは、砂漠の中にある耳の聞こえない農夫がいる家でのことでした。
実はこの時、これまでになくアレハンドロはかつて持っていたはずの「親心」を思い出します。
手話を使いこなす
アレハンドロは、耳が聞こえない農夫と手話で話を進めます。イザベルもそれを気にしていました。
アレハンドロが手話を話せたのは、自身の娘もまた耳が聞こえない子どもだったからです。
分かるよ
引用:ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ/配給会社:コロンビア映画
これは農夫の妻に、耳が聞こえないことの気持ちに同情したときの手話でのセリフです。
これまでの内容を見ても、アレハンドロがここまで人に共感を示した場面はありません。
そうなったのは、手話を使うことで過去の自分の「親心」を思い出したからに違いないでしょう。
「親心」を向ける相手はもういませんが、少なからず目の前には自分を信用してくれている子ども(イザベル)がいます。
だからこそ、イザベルを守る決意をさらに強めたのでした。
「レイエスの娘」にはきついかもしれない
一通りこれまでのことを話し合ったイザベルとアレハンドロ。イザベルはふと、国境を越えることがきついかどうかを聞きます。
(きつい)かもしれん。レイエスの娘には
引用:ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ/配給会社:コロンビア映画
このシーンの直後、イザベルは自分の髪を切っていました。
つまり、イザベルはレイエスの娘であることを捨てる決意をするのです。
イザベルがここまでしたのは、完全にアレハンドロを信用したからこそ。
逆に言うと、アレハンドロ自身もイザベルを信用しており、そこに殺意など全くないことが分かります。
むしろイザベルを応援しているかのように見えるアレハンドロは、娘の信用に応えるため、抹殺をしないのでした。
そこにあるのは、娘を応援する親としてのアレハンドロの姿なのです。
さらに奥が深まる『ボーダーライン』
前作に比べると、アレハンドロの過去に起因する「人間らしさ」があふれた『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』。
一作目が冷徹な暗殺者、二作目は人間味ある親心を見せた守護者でアレハンドロは描かれました。
アレハンドロという一人の人間にとっての「ボーダーライン」。メキシコとアメリカの国境の意味や人としての「ボーダーライン」。
さまざまな境界を生み出す本シリーズは、続編によってさらに奥が深まりそうです。