出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07YNVZ9QM/?tag=cinema-notes-22
映画『ガリーボーイ』は2019年に公開され、インドのミュージカル映画としては珍しい「ラップ」を扱った作品です。
監督はゾーヤー・アクタル、主演にはランヴィール・シンとアーリヤー・バットを据えています。
題材はムンバイのスラム街出身の青年ラッパー・ムラドとその仲間たちの成長物語です。
興行成績・受賞歴共に好調でボリウッド映画興行成績第9位を取り、例えば以下を代表して受賞しています。
第26回スター・スクリーン・アワード 最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀主演男優賞・最優秀主演女優賞・最優秀新人男優賞
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ガリーボーイ
インド社会の現実がもたらす閉塞感に苛まれた青年が新たな時代を切り開く様は実に痛快です。
本稿ではムラドが様々な壁に苦しみながらも歌を続けられた理由を考察していきましょう。
また、ラップが家族関係にもたらした影響はや身分の違いを超えた恋人サフィナとの絆も読み解きます。
ラップ映画の新生
本作が成し遂げてみせた偉業は様々ありますが何よりも大きいのは「ラップ映画の新生」ではないでしょうか。
ラップ映画といえば『8マイル』をはじめ2000年代初頭から様々な形で台頭し、1つの時代を築き上げました。
今や音楽文化として馴染み本来の意義が形骸化したラップ文化をインド映画の観点で組み立て直しています。
ラップ音楽はそもそも社会に対する痛烈な批判・揶揄・問いかけというロック魂に満ちた音楽です。
それを本作ではインド社会に依然として残る厳しい階級社会への批判・揶揄・問いかけとして表現しました。
そんなラップ映画の新生という偉業を成し遂げた本作をしっかり考察していきましょう。
ムラドが歌を続けられた理由
スラム街に住むムラドを取り囲む環境はお世辞にも良いとはいえませんでした。
ラッパーとしての道を決意した彼には様々な障壁・試練が降りかかってきます。
そんな中でもムラドが歌を続けられた理由は果たして何だったのでしょうか?
仲間の力
1つ目にムラドを支えてくれる仲間の力が非常に大きかったことが挙げられます。
大学祭で出会ったラッパー・MCシェールを中心に魅力的な仲間たちが後押ししてくれました。
恋人サフィナやバークリー音楽大学のスカイ等々ラップを通しての素敵な出会いがあったのです。
勿論良いことばかりではなく、例えばスカイと親密になったせいでサフィナと別れたりもしています。
しかし、それを経ても尚彼は仲間達を信じていたからこそラッパーとして大成できたのです。
特にMCシェールはムラドの人生を救ってくれた恩人といえるのではないでしょうか。
YouTubeに投稿した動画再生数
2つ目に挙げられるのがその音楽の才能を証明するYouTubeに投稿した動画の再生数でした。
ムラドが音楽の世界へ飛び込むきっかけになったもので、彼の才能の高さが数字で証明されています。
ここで素晴らしいのは単に才能が凄いだけではなく、それを数字という結果で残していることです。
幾ら突出した才能を持っていても、あくまでビジネスなので数字で示せないと意味がありません。
この動画再生数があったからこそ、どんなに辛いことがあってもムラドの糧になってくれました。
才能への自負心
そして3つ目に挙げられるのが何よりもムラド自身の音楽の才能に対する自負心でしょう。
後述する家族関係にも繋がりますが、彼は終盤で才能を否定する父に動画再生数を出して説得します。
神にさずかった才能を手放す気はない
引用:ガリーボーイ/配給会社:ツイン
才能はとても便利な言葉として響きますが、その才能を生かすも殺すも最後は自分次第です。