目先の感情に取り憑かれてその奥にある本当に大切な物を見失ったらエリザベスもこうなります。
エリザベスはジェレミーが自分にとってどれだけ大切な存在かを改めて思い知るのです。
ノットセルフからトゥルーセルフへ
こうして1年間の旅と出会いの中でどんどん過去への執着を断ち切ってエリザベスは解放されていきます。
自分がこだわっていたものが実はそれ程大切なものでもなかったと客観視・相対化出来たのでしょう。
しかしその中でも本当に大切なジェレミーには定期的に葉書を送り続けていたのです。
そしてまたジェレミーも1年間離れたことで自身の過去を断ち切りカティアの鍵を捨てました。
手放すことでどんどん2人はノットセルフ(嘘の自分)からトゥルーセルフ(本当の自分)へ戻ります。
だから本作は”自分探し”ではなく“断捨離”の作品なのです。
レスリーが嘘をついた理由
エリザベスはレスリーと出会い、利害の一致によって賭けに出ますが大敗しました。
しかし、実は賭けには勝っていたのでレスリーはエリザベスに嘘をついたことになります。
何故レスリーはわざわざ嘘をつかなければならなかったのかを読み解いていきましょう。
寂しさ
レスリーは寂しさから1人でラスベガスへ行くのが嫌だったとエリザベスに語りました。
その寂しさは彼女自身のギャンブラーという職業の不安定さや服装にも現われています。
やや派手なメイクアップに薄手の青や紫色の服装は彼女の寂しさの象徴ではないでしょうか。
派手な服装やメイクをする人は意外と内面が脆く自分に自信がないタイプが多いといわれます。
その内面の脆さ・弱さを隠す為にレスリーはエリザベスに嘘をついたことが窺えます。
父の生き写し
2つ目に挙げられるのはレスリーの生き様が父の生き写しであるということです。
父は徹底して娘にも、そして恐らくは他者にも嘘をつき続ける人生を送りました。
レスリーもまたエリザベスをはじめ他者を信じず色んな人に嘘をつき続けるギャンブラーです。
子供は親の背中を見て育つというのを良くも悪くも体現したのがレスリーでしょう。
親がしてきたこと、親に教えられたことを子供は大人になって繰り返し行うものです。
手放してはいけないものもある
そんなレスリーでも父の形見の車だけは大切だったと嘘をつくことが出来ませんでした。
これは決してエリザベスと打ち解けたとかではなく、あくまでもレスリーの本音が出ただけです。
恐らくは父の死と向き合ったことでレスリーにとって本当に大切なものが見えたのでしょう。
本作は断捨離、即ち過去の未練や執着を断ち切ることで本来の自分へと戻っていく構造です。
しかし決して全てを手放していいのではなく、本当に大切なものは手放してはいけません。
レスリーにとってはそれが正に父との絆であり忘れ形見の車だったと推測されます。
嘘をつき続けた末にレスリーもまた本来の自分へと戻ることが出来たのです。
父の言葉の真意
レスリーの嘘の背景にあったのは父から教わりエリザベスへ伝授した次の言葉でした。
たとえ人を信じても最後にはカードを切れ!
引用:マイ・ブルーベリー・ナイツ/配給会社:アスミック・エース
果たしてこの言葉の裏にはどのような真意が込められていたのでしょうか?
本作のテーマやこれまでの考察と絡めて見ていきましょう。
安易に他人を信用しない
まず1つ目に安易に他人を信用しないという猜疑心や批判精神の重要性です。