極めつけは、助かるかと思ってゲージを引き上げられた時、まさに天国から地獄に落ちるようにゲージは再び落下しました。
この時から、リサの脳は極度のストレスにさらされ、振り切っていたと考えられます。
だからこそ、脳が現実から逃避するために窒素酔いの症状を加速させるのです。その結果狂ったような笑いにつながります。
ケイトの死を受け入れられない
誰だって血を分けた兄弟や姉妹の死を受け入れることは、容易ではありません。しかも、今回のような事故であればなおさらです。
リサの場合にはこの状況からもう一つ、ケイトの死を受け入れたくないと思う原因がありました。
あなたは活動的で海外旅行に珍しい体験、男にもモテモテ。私はかなわない。地味で退屈な姉だもの。でも彼との恋だけはあなたに勝ててた
引用:海底47m/配給会社:エンターテイメント・スタジオズ
これは海底でリサが心の内をケイトに明かした場面です。
ケイトは意識していなかったようですが、リサはケイトを羨望の眼差しで見ており、さらには競争相手と思っています。
これがリサのケイトに対する、最後の「姉妹の会話」になりました。当然リサ自身は後悔したことでしょう。
「こんな内容が最後の姉妹の会話になった」と。
だからこそ、リサは精神状態が振り切ってしまい、幻覚と自分の望み(ケイトが助かる)を入れ込んでしまうのでした。
ハビエルを助けに行く理由
作中で姉妹は不可解な行動に出ました。ハビエルを助けに行くのです。
ゲージの外の危険性は分かっているはずなのに、二人はハビエルを迎えに行こうとします。
これは、もちろんハビエルの様子をうかがうというのもあるでしょうが、まず、自分たちの身の安全を確保するためにも必要でした。
ゲージ引き上げ用の予備のウィンチ
やっとの思いでテイラーと連絡をすると、二人の救出のために予備のウィンチでゲージを引き上げる作戦を伝えられます。
では、そのウィンチは誰が設定するのかというと、ハビエルしか考えられません。
となると、海の向こう側で水中ライトのみが光っており、ハビエルから返事がないのは、自分たちの身が助からないこととイコールです。
だからこそ、危険を冒してまでリサはハビエルを迎えに行くのでした。
残り少ないエアは冷静でいられなくする
本作において、恐怖の対象となるのはサメだけではありません。空気がないことも、時間制限があることの恐怖です。
ちょうどハビエルが持っていたライトが見えたとき、リサの残圧が80でケイトが17でした。
この直前には、残圧が80あれば20分呼吸が可能だとケイトは説明しています。ということはケイトは残り5分も呼吸可能な時間がないのです。
結果としてリサがハビエルの救出に向かうのですが、これは残圧の状況から「冷静でいられない」からこその行動でした。
しかもリサは、暗い海底に潜ってまでハビエルを探しに出かけます。それは時間制限ゆえの、危険な行動なのです。
しかし、そうせざるを得ないほど、冷静な判断力は失われていたと考えられます。
明らかにされないことの恐怖
ケイトの生死やリサが狂ったように笑うことなど、本作は明確に語らないからこそ観衆の想像を掻き立て、恐怖へ引きずり込みます。
一方明確に語らないからこそ、映像から判断できる要素は多くありました。
海底47mに取り残される恐怖。パニック映画だからこその恐怖の演出方法は、ホラー映画とは違った怖さがあります。