どういうことかというと、マイクはDに頼まれてケヴィンを消したのです。
だからケヴィンの時と同様、障害になるアディソンをマイクに殺させようとしたのでしょう。
自らは手を下さずマイクに殺させる辺り、Dが凄く卑劣な男であることが窺えます。
騙しを専門とする詐欺師の手法をDは得意としていたのではないでしょうか。
裏切り
2つ目に実はアディソンのみならずマイクをもDは裏切っているのです。
何故かというと、このまま話が進めば自分たちも逮捕されると踏んだからでしょう。
自分たちが計画を進める上で障害となる人物は誰であろうと切り捨てる。
本作における「悪」の象徴として見事なまでにDの悪辣さが際立っています。
敵のみならず味方でさえも巻き込む辺りが策士だと感じさせる所以です。
まさかの伏兵
しかし、そんなDの目論見は最後にアディソンの恋人フィービーという伏兵によって潰されます。
アディソンの無茶する性格を承知の上で先回りして警察に連絡していたのです。
ここでアディソンのヒロインという添え物だった彼女が独立したキャラとして動きます。
もしフィービーが裏で働きかけてくれなかったらアディソンは殺されたかもしれません。
結果的にはフィービーがアディソンの命を助け生かしたことになります。
やはりフィービーはアディソンにとって「生」の象徴だったのではないでしょうか。
過去から未来へ
事件を解決したアディソンは母と親友の死を乗り越え、穏やかな表情になっていました。
そしてフィービーから最後にフィービーの入学先の町へ向かう電車の時刻を教えて貰います。
これは正にアディソンの気持ちが「過去」から「未来」へ向かっていることの表れでしょう。
フィービーもアディソンの辛い時期を支えたことは大きな糧となったのではないでしょうか。
彼女もまた少女から大人の女性へと顔つきや態度が変化していました。
命がけの捜査をしたことで2人の男女は少年少女から大人へと成長していったのです。
成長とは痛みと喪失を伴うもの
本作が伝えてくれるメッセージは実にストレートで、要約すると「成長とは痛みと喪失を伴うもの」です。
親友の死と母の死、そしてアディソンとフィービーの処女喪失といずれもが「痛み」を伴います。
痛みを知ることで人は成長し前へと進んでいく生き物であり、思春期はそれがダイレクトに出るものです。
それを「生と死」をテーマとして犯罪と繋げ、1つの青春物語へと昇華してみせました。
そのように見ていくと、また違った作品として本作を考察・解釈出来るのではないでしょうか。
切なさ・寂しさが伴いながらもどこか温かく優しい不思議なテイストの良作です。