一度目の無言電話がブルースの家にかかってくる前、アンジェラはそれが殺害の脅迫であり勧誘だとも語ります。
こう言うことで、目の前で無言電話があったときブルースの脳内にその情報が流れるからです。
さらに二回目の無言電話の直後には、公衆電話の受話器を取っているアンジェラがいました。
つまり無言電話をかけていたのがアンジェラであることの証拠です。これは、ブルースに悪魔崇拝の存在を信じさせるための手なのでした。
有罪になりたいジョン
こうなると、最後の疑問はなぜ無罪なのにジョンは有罪を望むのかということ。
わざわざ悪魔崇拝を背景にしながら、自分がやったともやっていないとも言わず、ただ言われるがままに捜査に協力します。
これは、ジョンが「違った意味で」罪を自覚していたことが原因でした。
家族を壊したことの罪
先述したように、ジョンについての確実は情報はアルコール依存症であったことです。その結果、家族関係は崩壊してしまいました。
この罪を感じていたジョンは、ある意味今回娘への性的虐待の疑いで捕まったことに対して、都合が良いと考えたのです。
子どもたちにしたことを償うためなら、何でもする。罪を認める以外他にどうすればよかった?
引用:リグレッション/配給会社:ユニバーサル・ピクチャーズ
ここで言う「償う」とは、アルコールによって家庭を壊したことに対して。罪を認めるとは、悪魔的儀式虐待のことです。
全く違う罪であり、刑事上の責任はないアルコール依存と虐待をすり替えて、ジョンは有罪になりたがったのでした。
それもこれも子どもたちへの償いのため。こう思って、ジョンは有罪を望むのです。
アンジェラを見逃して欲しい
アンジェラが嘘をついて、警察やすべてを巻き込んで事件を大きくしていることに対して、ジョンは見逃して欲しいと言います。
アンジェラが助かるならどうでもいい。娘は見逃してくれ。
引用:リグレッション/配給会社:ユニバーサル・ピクチャーズ
ただその理由は、父親が罪を肩代わりしていることをアンジェラが知ると、父親への憎しみが和らぐかもしれない、ということでした。
ジョンが罪を認めず真実を話すと、捜査官はアンジェラの嘘について調査するでしょう。
こうなると、余計アンジェラは父親を憎むかもしれません。
ジョンが有罪となることが、アンジェラとジョン双方にとって望む結果なのでした。
悪魔崇拝による記憶の抑圧
ジョンがラストまで真実を語らなかったのは、悪魔崇拝という集団ヒステリーによる記憶の抑圧がありました。
映画冒頭、退行により記憶のセラピストにより記憶を探る捜査が行われます。
その際ジョージは出てきましたが、横でカメラを持ちフードを被っている人もいました。つまりこの人は悪魔崇拝者です。
退行という捜査を行ったにもかかわらず、悪魔崇拝への意識がジョンの記憶を改ざんし、思い出すことを妨害していることを意味します。
それほどまでに、ジョンはアンジェラを守ろうとし、本当の記憶を心の奥深くに沈めこむのでした。
逆に言えば、そうしてまでもアンジェラに対する罪を償いたかったということ。ジョンは心底罪悪感を感じていたのです。
集団ヒステリーはどこでも起きる
日本国内でも集団ヒステリーと思われる事件は起きています。それほど身近であるということです。
事件の一つには、「霊に憑依された」という言い方をしているあたり、本作『リグレッション』との共通点があります。
「regression」とは本来、退行や後戻りという意味があり、本作でもそれによる捜査は行われていました。
映画ラストのシーンでは、虚偽記憶が生み出すこともあるので、退行による催眠療法が現在行われていないことを記しています。
そういえば、ジョンを退行させたときも悪魔崇拝と絡んだ虚偽記憶が出てきました。歪められた認知が表出するのです。