例えば風間を殺した時に海老原に何の相談も連絡もなくその場の感情で殺し、報告も怠っています。

しかもミサキがグラビアの仕事をしていた過去に目をつけてストーカーじみた脅迫行為も行いました。

挙げ句の果てにはミサキを誘拐した挙句、そのミサキごと砂川に拉致される醜態までさらしたのです。

これだけ好き勝手やった挙句入院中の海老原には何の連絡も報告も行っていません。

社会人としての義務である報連相すら出来ていないのですから頭撃ち抜かれて当然です。

自分だけ助かろうとした

2つ目に小島が自分だけ足を洗って普通に生きるなどというようなことを宣ったのです。

数々の不義理・裏切りを重ねた上に自分だけがのうのうと平和に生きようとしました。

これはボスの海老原に限らず誰から見ても虫の良すぎる話えはないでしょうか。

小島は結局のとこと保身しか考えておらず、自分さえよければ周りはどうでも良かったのです。

こんな男を部下に置いてしまったけじめを海老原が尻拭いとしてつけた形でしょう。

アキラへの後ろめたさ

うしろめたさの人類学

そして3つ目にこの後海老原は影で見ていたファブルことアキラにこう問いかけます。

お前は…誰も殺せへんかったか?

引用:ザ・ファブル/配給会社:松竹

そう、海老原の中でずっと心残りだったことはアキラをこの事件に巻き込んでしまったことでした。

入院中にはそのせいでアキラのボスに脅しをかけられたこともあり、責任を感じていたのでしょう。

だからこの射殺はアキラに行わせたくないことを海老原が代行した形になっているのです。

小島の頭を撃ち抜いたのはファブルことアキラに対する謝罪だったのかもしれません。

原作で描かれたその後

ザ・ファブル(22) (ヤングマガジンコミックス)

本作では原作漫画の7巻までの再現となりましたが、原作ではこの後続きがあります。

普通になったアキラはボスとの相談の上で組織を抜けてミサキと内縁の夫婦となるのです。

正に完全に一般人となって人間らしく成長していったのではないでしょうか。

ヨウコ共々旅に出ていき、人間らしさを取り戻していったとされています。

ここからも本作のテーマがアキラとヨウコが「人間性」をどう形成していくのかにあったと窺えます。

“普通”であることの大切さ

「普通がいい」という病 (講談社現代新書)

本作は作品全体を通して“普通”であること=中庸の大切さを逆説的に解いたのでしょう。

プロの殺し屋が普通の人間世界で生きていく設定だからこそこのドラマが映えたのです。

普通であることの大切さは普通の暮らしをしている渦中の人には分かりません。

ずっと特殊な世界で特殊な訓練を受けて生きてきた者だからこそ世俗の有難味が分かるのです。

正に「左右極限を知らねば中道に入れず」をストレートに描いた作品でありましょう。

ド派手なアクションとハードな物語展開の裏に普遍の真理が光った傑作です。

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