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映画『グレートウォール』は2016年公開の米国・中国合作という異色の作品です。
監督がチャン・イーモウで主演がマット・デイモンという組み合わせ自体も中々ないでしょう。
更に脇もジン・テイエンやウィレム・デフォー、ペドロ・パスカルと米中のスターが入り交じっています。
万里の長城を舞台として宋王朝時代の戦争アクションを描いた痛快で王道のエンターテイメントです。
本稿ではラストにウィリアムがトバールを選んだ真意をネタバレ込みで考察していきましょう。
また、饕餮の弱点が磁石である理由や研究が済む前に饕餮を皇帝の所へ送った理由も併せて読み解きます。
チャン・イーモウ監督の転換点
本作で特筆すべきは常に中国映画史に変革をもたらしてきたチャン・イーモウ監督の転換点であることです。
チャン・イーモウ監督は丁寧な人物描写と群を抜く美術センスという芸術系としての評価を確立していました。
そんな監督が本作において大衆向けの超大作映画路線へと大胆に作風をシフトしていきます。
この路線変更は賛否両論で、公開当時はかなり批判されており芳しい成績を残したわけではありません。
しかし、そんな転換点の作品だからこそ試行錯誤の跡があって、受け手としても発見は多いでしょう。
そんな監督の転換点となった本作が残したものをじっくり考察していきます。
トバールを選んだ真意
万里の長城を舞台とした壮大な戦いの末、ウィリアムとリンは見事饕餮との戦いに勝利します。
その結果としてウィリアムは火薬を選ぶかトバールを選ぶかでトバールを選びました。
ここではその真意について考察していきましょう。
組織の鍵は副将が握る
まずここで示されたのは「組織の鍵は副将が握る」ということではないでしょうか。
トバールはウィリアムの右腕的存在として常に傍に控え、彼の為に動いていました。
火薬を奪ってウィリアムを見捨てるようにいわれても、トバールはウィリアムを選んだのです。
トバールはウィリアムの弓の腕並びに主将としての器を誰よりも惚れ込み尊敬していました。
それがウィリアムにとっては何より嬉しかったのではないでしょうか。
組織の鍵はトップよりも2番手にある、そのことをウィリアムは今回の戦いで学んだのです。
人材は得難いものである
2つ目に火薬は直ぐにでも得られるが人材は得難いものであるということです。
火薬は消耗品であり、戦いの中でしか用いられず、資金さえあれば簡単に手に入ります。
しかし人材は決して消耗品ではないし、資金でどうにかなる問題ではないのです。
人材はあくまでも信用と実績があって、その上にこそ成り立つものではないでしょうか。
また何よりも運がなければそういう人材と出会うことは出来ません。