出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B079VVPP6G/?tag=cinema-notes-22
映画『アリスのままで』はリサ・ジェノヴァの原作小説を実写化し、2014年に公開された作品です。
監督はリチャード・グラッツァーとウォッシュ・ウェストモアランド、主演をジュリアン・ムーアが務めました。
更にアレック・ボールドウィン、クリステン・スチュワート、ケイト・ボスワースら豪華キャストが脇を固めます。
見所は何よりも役者たちの演技力の高さであり、ジュリアン・ムーアは以下の功績を残しました。
主演のジュリアン・ムーアが第87回アカデミー賞で主演女優賞を受賞した。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/アリスのままで
物語は50歳にして若年性アルツハイマー病を発症した言語学者アリスを取り巻く家族のお話です。
本稿ではラストシーンの意味を考ネタバレ込みで考察していきましょう。
また病気が家族に与えた影響とジョンがアリスを残して転勤した理由も併せて読み解きます。
若年性アルツハイマー病の怖さ
本作でメインテーマとして扱われているのは若年性アルツハイマー病の怖さです。
認知症の類ですが、日本でも4人に1人がかかるといわれており、明確な治療法も確立されておりません。
しかもよりにもよって本作でそれにかかったのは言葉を上手に扱う天才である言語学者なのです。
言葉を武器としている人間が病気にかかった過程でどんどん言葉を忘れていくのは何と皮肉なことでしょう。
物語の筋立ては特に難しくはなくシンプルですが、その分奥が深く繊細で緻密な演技力を要求されます。
そのプレッシャーをはね除けたジュリアン・ムーアの演技力は受賞も納得のクオリティでした。
果たしてそんな本作が何をメッセージとして伝えてくれるのでしょうか?
ラストシーンの意味
本作のラストシーンは次女リディアが実家に戻って母アリスの面倒を見る結末となりました。
そこで2人のやり取りがあるのですが、ここで示されているのは何でしょうか?
アリスのまま
最も重要な意味はアリスが単にリディアに看護されるのではなく、自我を失っていないことです。
アリスはリディアが覚えてないだろうと思ってした愛の話をきちんと覚えていました。
そう、難病にかかりながらも尚アリスは自分らしく居続ける戦いの道を選んだのです。
たとえ記憶を失っていっても、彼女のアイデンティティが失われることはありません。
正に「アリスのまま」として生き続けている、静かながら強い意思の感じられる結末です。
リディアの優しさ
2つ目にここで示されているのは次女リディアの優しさであり、ここが本作の肝です。
これは後述する家族病気が家族へ与えた影響とも関連する見逃せないポイントでしょう。
リディアは大学進学を拒み役者の夢を追ったことで母と口論が絶えない人でした。
そんな喧嘩していた彼女が家族で唯一母を介護する覚悟を決めていたのです。
実はリディアこそが誰よりもアリスを1番理解し受け止めていたのではないでしょうか。
家族の絆の嘘くささ
そして3つ目にどんどん離れ離れになっていく家族の絆の嘘くささも意味しています。
序盤で順風満帆だったアリスの家族が物語をきっかけにどんどんその絆を失っていくのです。
個人単位でアリスに寄り添う人は居ても、家族全体でアリスの為に一致団結などしません。
そんな家族というものの虚しさ・儚さもまた描かれており肯定されていないのです。