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映画『まほろ駅前多田便利軒』は三浦しをんの原作小説を映画化した作品で、2011年に公開されました。
監督は大森立嗣、主演を瑛太と松田龍平という2人の実力派イケメン俳優が務めています。
物語の舞台は架空のまほろ市であり、駅前で便利屋を営んでいる多田と行天の日常がメインです。
様々な人との出会いや関わりを通しながら2人は自分の過去や現在と向き合うことになります。
『まほろ駅前番外地』『まほろ駅前狂騒曲』などの続編やテレビシリーズも非常に人気です。
本稿ではラストで多田が家を出ていくよう伝えた真意をネタバレ込みで考察していきましょう。
また、チワワを預かる意味と行天が山下を心配した理由も合わせて読み解いていきます。
相反する性質の2人
さて、本作の見所は何といっても多田と行天という壮反する性質の2人にあります。
多田は良くも悪くも直情径行でいってみれば「気まま」な人で、周囲の気持ちには無頓着です。
行天は逆に単独主義者のようでいて実は「人の目を気にする」人で、周りの気持ちをよく見ています。
中学時代の同級生でありながら全く生き様の違う2人は正に光と影ではないでしょうか。
しかし、お互いに不器用故に社会のレールから外れた生き方が共通しています。
そんな2人の何ともいえない距離感と関わり合いの中で見えてくる世の悲喜交々がメインテーマです。
東京都町田市をモデルにして展開されるまほろ市の物語は何を伝えてくれるのかを見ていきます。
家を出ていくよう伝えた真意
ラストシーンでは多田が行天に家を出て行くように伝え、行天は出て行きます。
しかしその後しばらくして何故かまた多田は行天と再会し、便利屋稼業をやっていくのです。
再会が前提だったにしても1度家を出て行くように伝えた真意は何だったのでしょうか?
情けない所を見られたくない
まず1番に挙げられるのは多田は行天に情けない所を見られたくないということでしょう。
行天にとって多田眩しく見える希望の光そのもので、それは大人になってからも変わりません。
大事なのは家に出て行くよう伝えたのが離婚を暴露して行天に励まされた直後ということです。
つまりどれだけ弱みを見せても、行天に求めていたのは相談役や励ましの声などではありません。
そこは男のプライドとして、頼り頼られる対等の相棒でありたかったのではないでしょうか。
その為には1度距離を置いて離れてみる必要があったのです。
1人で生きる強さ
劇中では多田の強さと行天の弱さが目立ちますがそれは言動・行動を表面だけで見ればの話です。
多田は多田で行天の愛されず育ったが故に孤独に強い生き方に憧れを持っていました。
そのぶっきらぼうさとは正反対に他者の感情を的確に理解して空気を読んだ行動が取れます。
道なき道を行き、普通の人には出来ない闇に向かって走る行天は孤独ならではの強みがあるのです。
だからこそ1度は誰にも頼らず1人で気持ちを汲み取れるように孤独に耐えて生きようとしたのでしょう。