出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07G184291/?tag=cinema-notes-22
ジェシカ・チャステインがポーカーによるゲームの運営者モリー・ブルームを演じる『モリーズ・ゲーム』。
アーロン・ソーキンが映画監督を務めた本作は、セレブ達を守るため有罪を認めたモリーで幕切れとなりました。
本作で気になるのは、やはりなぜモリーが司法取引を断り有罪を主張するのか、ということでしょう。
さらには、イドリス・エルバ演じる弁護士のチャーリー・ジャフィーに司法取引の内容を聞く前には、父親との再会を果たしました。
家を出て行て戻るつもりもなかったモリーの元に、なぜ父親は訪れたのでしょうか。
そして、モリーが疑われる要因の一つとなった、ロシアンマフィアとモリーの関係も気になります。
今回はこれらの点について考察していきます。
ゲーム運営者として守るべきもの
何度くじけても、自分がいる場所をセレブプレイヤーご用達のゲーム会場にしてしまうモリーの才覚は、疑いの余地がありません。
モリーには才覚がある上に、運営者としての覚悟もあります。運営者として、大事にすべきはセレブ達、つまりプレイヤーです。
そのためには、自分の人生でさえ授けてしまうモリ―でした。
顧客データの死守
FBIの捜査が入り、ゲーム運営者として合衆国憲法違反の疑いで一度逮捕されたモリー。
結局検察はモリーを起訴します。その上で、モリーが自身の身を守るためには顧客データの提出が必要でした。
大変な中身よ。大勢が破滅する。家族の将来、命も危ない
引用:モリーズ・ゲーム/配給会社:STXフィルムズ
顧客データを渡せば、自分は助かります。しかし、これまでプレイヤーとして参加してきた人たちが「破滅」するのです。
ゲームの運営者として信用を勝ち取るには、プレイヤーからの信頼が必要なので、モリーは有罪を主張するのでした。
名前しか残っていない
モリーはもともと、モービルの選手で将来を有望視されていました。しかし、事故により選手として再起不能になります。
兄や弟は、見事に人生の「成功者」となっており、モリーはそれに引け目を感じていました。
私は気にする。なぜなら、私にはそれしか残ってない。それが私の名前だから。他の呼ばれ方はしない
引用:モリーズ・ゲーム/配給会社:STXフィルムズ
これは、チャーリーと裁判について話し合っているときのセリフです。
まだ、投獄されない可能性はあるのに、モリーはすでに名前しか残っていないことを語ります。
他のプレイヤーには失うものがたくさんあり、モリーには名前が残っているだけ。この名前は曾祖母からもらったもので、モリーの宝物です。
「モリー・D・ブルーム」の名前さえあればあとは何もいらないと思い、モリーは顧客データを守ったのでした。
アーサー・ミラー「るつぼ」
本作の内容でキーワードとされたのが、アーサー・ミラー著「るつぼ」。これはチャーリーの娘ステラが読んでいた本です。
実在した魔女狩りが基になっているもので、気高く生きるために主人公は自身が魔女と関わりのある者として、処刑台に登ります。
まさにるつぼだ
そう、それぞれが正しいのよ引用:モリーズ・ゲーム/配給会社:STXフィルムズ
「るつぼ」に出てくる主人公のように、モリーも気高く生き、自分の考えを貫くために有罪を主張するのです。
「それぞれ」とあるように、何が正義かは自分が決めること。モリーにとって、自分を顧みず、周りの人のことを救うことが正義なのです。
真っ当にやってきた自信
では、FBIの捜査が入りはしましたが、実際にモリーが運営を務めるゲームでは、不正や法律違反があったのでしょうか。
実は、一度だけプレイヤーから取ってはならない手数料を取っていますが、これは従業員が勝手にやったこと。
モリー自身は、一度も不正を行っていませんし、そもそもFBIによる捜査嫌疑には、この手数料のことは含まれていません。
自分は正直に生きてきた
モリーは合計三度のゲーム運営に携わります。その三度目のゲーム会場を開いたとき、モリーは自分が真っ当に運営していることを語りました。
すべて合法的で、帳簿もある。私は世界一のゲーム運営者。チップのみ。まだ手数料は取らず、ロシアの犯罪組織とも無関係
引用:モリーズ・ゲーム/配給会社:STXフィルムズ
自信ありげにモリーはこう言いました。実際に真っ当や運営をやっています。
そうなると、モリーに疑いがかかることはないはずですが、他に捕まったセレブ達がモリーを裏切り、証言しているのです。
しかし、真っ当に生きているからこそ、それに対抗するも、嘘に付き合うのもモリー次第。
モリーにとっては、他の捕まったセレブたちの証言に乗ってあげるという「選択肢」を選んだだけなのです。