ダニエルとメロディの仲が学友たちの知るところとなり、二人は学友たちにからかわれます。
中でもトムのからかいは執拗で、ダニエルはそんなトムに殴りかかり、取っ組み合いのケンカをしてしまいました。
これらの場面はいわゆる「いじめ」を連想させますが、そこには陰湿さが全く感じられません。
からかう方もからかわれる方もある意味ピュアで、深刻さが全くないのです。
もちろんトムはダニエルを自分の方に引き戻したいと考えていました。
メロディのもとに走るダニエルに対して、彼が興味を持ちそうなあれこれを並び立てて引き留めようとするトムは健気です。
物語ではあっさりとトムがダニエルたち二人を認めてしまいます。
少しあっけなく感じる部分もありますが、所詮子供の世界はそんなものかも知れません。
大人たちのようにいちいち根に持っていては毎日が楽しくないのです。
爆弾の意味
物語ではダニエルたちの学友に爆弾マニアの少年が登場します。
少年たちが爆弾を実験する場面が全編を通じて出てきて、やがて最後には何か決定的なことが起きそうな予感を感じさせるのです。
この物語が子供たちの革命戦争であるならば、爆弾という小道具は非常に象徴的な役割を持っているといえます。
そして、これは「子供たちの実力をなめてはいけない」という大人たちへの強力なメッセージでもあるのかも知れません。
爆弾がダニエルの母親の車を大破させ、呆然とする母親の姿は非常に印象的です。
大人はわかってくれない
この物語では所詮大人は子供を理解できないし、しようともしないことが表現されています。
大人たちの妥協と自己都合に浸りきった世界とは別世界の子供たちの世界が現実に存在することを、この物語は教えているのです。
そこには純粋な形の友情や恋や野心までもありますが、大人には見えません。ダニエルは「一週間も愛しているのだから50年でも大丈夫」といいますが、大人の論理では無茶苦茶に聞こえます。
でもダニエルは真剣に心からそう思っていて、メロディもそれに納得するのです。
大人は無理にわかったふりをする必要はないのかも知れません。子供たちなりに真剣でピュアな世界がそこに存在することだけを理解すればいいのかも知れません。
【小さな恋のメロディ】は子供たちの革命戦争
【小さな恋のメロディ】は美しい映像や音楽にのせて、あどけない子供の世界を描いているだけの作品ではありません。
遊びや友情、恋、そして毎日を楽しむことに対する子供たちの本気度は大人たちの想像以上のものがあります。
その気になればこの物語のような革命を起こすこともできるのです。
この物語は大人たちをがんじがらめにしている前例踏襲や横並び、権威への執着、世間体などの虚飾を取り去った世界を見せてくれます。
きっといつの時代にも多くの人の心を温かくすることでしょう。