しかし、ハルはずっと息子にゲイであることを隠して過ごしていました。
すなわち、本当の自分を偽って殻に閉じこもっていたのは父も同じだったのです。
その本質が親子で共通しているからこそ、孤独から抜け出せなかったのでしょう。
この親にしてこの子ありとはよくいったものです。
カミングアウトした理由
ハルは死ぬ間際になっていきなり自身がゲイであることを告白しました。
突然の告白に驚きを隠せないオリヴァーですが、何故隠していたのでしょうか?
本当の自分で生きたかった
1番の理由はハルが本当の自分として生きたかったからです。
ハルは妻にかつてゲイであることをカミングアウトしたところ「治す」といわれました。
しかし、それはハルの個性を認めたわけではなく、寧ろ全否定するようなものだったのです。
だから息子が自立して1人前になるまで、ハルは「良き父」という役割を演じていました。
そのような人生への悔いがあったからこそ、まずここで息子にカミングアウトしたのでしょう。
そして告白して以降のハルは憑き物が落ちたように清々しい笑顔で笑うようになったのです。
息子の将来を案じている
2つ目に、ハルはオリヴァーの将来を案じていたことが次のやり取りから窺えます。
ハル「ライオンをずっと待っていたがライオンは来ない。そこへキリンが来た。お前はどうする?」
オリヴァー「ライオンを待つよ」と答えます。
ハル「だからお前が心配なんだよ」引用:人生はビギナーズ/配給会社:ファントム・フィルム/クロックワークス
これはたとえ話ですが、オリヴァーは過去の習慣に囚われて自身の変化を拒む傾向にあります。
それが同時にオリヴァーの自己肯定感の低さや恋愛が上手く行かない要因にもなっていたのです。
すなわち、ハルは自分が殻を破ることで息子にも自分の殻を破って欲しかったのではないでしょうか。
オリヴァーはユアン・マクレガーが演じたことも相俟って凄く人当たりのいい好青年です。
それをもっと表に出していけば、人生が輝いていくことを見抜いていたのかも知れません。
行動が大切
3つ目に、ハルはオリヴァーに行動することの大切さを訴えたかったのではないでしょうか。
末期癌を抱えながらも、父は75にして男との恋愛など自分に正直に生き続けました。
行動していけば、人生は何があろうと前向きに変わっていくものなのです。
結果として、このカミングアウトはオリヴァーにとって非常に効果のあるものでした。
行動することの大切さを知ったオリヴァーは終盤にかけて大きく変わっていきます。
その大きな変化のきっかけとして、カミングアウトは象徴的に位置付けられているのです。
アナを自宅に招いた意味
父の死後、元気をなくしていたオリヴァーはアーサーの紹介であるパーティーに出席します。
彼は女優・アナと出会い惹かれ合っていきますが、オリヴァーの自信のなさから喧嘩別れを起こすのです。
そんなオリヴァーがラストでアナを自宅に招いた意味を考察していきましょう。
自己肯定感が上がった
まずオリヴァー個人の視点で見るなら、彼は自己肯定感が上がり過去の自分と訣別を果たしました。
ラストになると前半で見られた弱気で意気地なしのオリヴァーはもうどこにも居ません。
父がカミングアウトしてみせたように、オリヴァーもまた本当の自分で生きるようになったのです。
まず、オリヴァー自身の精神的な成長が見られたということが大きいのではないでしょうか。