出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07VGM9MLB/?tag=cinema-notes-22

映画『幸福なラザロ』は『夏をゆく人々』で有名なアリーチェ・ロルバケル監督渾身の作品です。

日本では2019年に公開され、71回カンヌ国際映画祭にも出品され、以下の功績を収めました。

Cannes Film Festival Best Screenplay Alice Rohrwacher Won
National Board of Review Top Five Foreign-Language Films Happy as Lazzaro Won
Independent Spirit Awards Best International Film Happy as Lazzaro Nominated

引用:https://en.wikipedia.org/wiki/Happy_as_Lazzaro

1980年代初頭のイタリアで実際に起こった詐欺事件を基に「現代の聖人」の物語を展開しています。

イタリアの閉鎖的な村にやってきたラザロと名乗る青年の生き様が見所です。

キリスト教の『ヨハネ福音書』に名を借りた彼の生き様は見る人々の心に美しい感動をもたらします。

本稿ではラザロが銀行で客たちに殺されたラストの意味を考察していきましょう。

また、そこにオオカミが現れた理由やアントニア一家のその後も併せて読み解いていきます。

村社会の恐ろしき縮図

家と村の社会学 (SEKAISHISO SEMINAR)

本作全体を通して描かれているのは村社会の恐ろしき縮図です。

かつて江戸時代の日本もこうした村八分のような空気・雰囲気が漂っていました。

ラザロが住んでいる小さな村・インヴィオラータはその空気がとても強く残っています。

それもその筈、この村の政治は領主デ・ルーナ侯爵夫人による搾取で成り立っているからです。

どれだけ働いても領主に持って行かれ吸い取られてしまうビジネスモデルが根本にあります。

欲望や執着が蠢くこの村において、ラザロは全くそのような欲や執着がありません。

そんな彼が世俗の人たちに汚されていき、悲惨な死を遂げる様は何を伝えてくれるのでしょうか?

現代にも深く刺さる哲学的な問いを発する本作をじっくり掘り下げていきます。

銀行で客たちに殺された意味

最新版 イラスト図解 銀行のしくみ

ラストでラザロは銀行で激怒した客たちに惨殺されるという結末を迎えました。

天使の如き純真さの持ち主であった彼には余りにも無残なラストでした。

ここではその意味についてじっくり考察していきましょう。

純真無垢への恐怖

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まずここで表現されているのは客たちのラザロが持つ純真無垢への恐怖です。

流れとしては強盗犯だと思い込み、違ったから殺したように見えますがそうではありません。

客たちはまるで汚れや欲望などないラザロの純粋さに恐れ戦いたのです。

村のしきたりやルール・自動化されたシステムの枠に収まらない人として描かれています。

ラザロを前にして、銀行員も含め周りはその異質さに困惑せざるを得ないのです。

そんなラザロに客たちは寄ってたかって袋叩きにし、排除するしか方法がありません。

そうしなければ、確実に自分たちが負けていたであろうからです。

膨れ上がった民意の怖さ

戦う民意

2つ目に、客たちの暴行を通して膨れ上がった民意の怖さが表現されています。

これこそが正に村社会における「村八分」の本質ではないでしょうか。

村の規定にそぐわず、違った考えや価値観・生き方をする人を数の暴力によって殺します。

そう、世の中で最も恐ろしいものは俗世の人たちが集まって織りなす民意です。

「赤信号みんなで渡れば怖くない」の理屈で、危険だと認識すれば殺人も合法化されます。

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