自分が生き延びるために日雇いの仕事をしていたのをシルバーに横取りされたのです。
彼にとってそれは生命の危機といっても過言ではないことだったのではないでしょうか。
そして、危うく自身が人の命を奪いかけたことを客観視して怖くなったのです。
命に敏感なチャーリーのキャラクターはここでも強調されています。
伯母に会うため
2つ目に、拳を握りしめたのはあくまでも伯母に会うためという目的の再確認です。
チャーリーがその手に握りしめていたのは伯母に会いに行くためのお金でした。
つまりそのお金は単なる稼ぎではなく、生命線とでもいうべき大事なものです。
それを失うわけにはいかないという精一杯な生き様がここからも感じ取れます。
手は口や目以上に雄弁ですが、この手は正にチャーリーの人となりが詰まっているのです。
何が何でも伯母に会うという目的に邁進する姿が感じられるのではないでしょうか。
闇から抜け出す前兆
3つ目に、チャーリーの手は闇から抜け出し光を掴んだ証だからです。
シルバーとの喧嘩は伯母との再会という光に至る前の最後の闇でした。
それまで彼の心はずっとピートと共に闇の中を駆け巡っていたのではないでしょうか。
再会の試練には様々な代償がありましたが、チャーリーはやっと抜け出したのです。
その前兆を感じさせる為の演出として象徴的に使われていることが窺えます。
居場所は自力で勝ち取れ
本作を通して伝わってくるのは「居場所は自力で勝ち取れ」というメッセージです。
両親が居て一緒に暮らせる日常や与えられる居場所は決して無限ではありません。
本当に大事な居場所や強さは自力でぶつかって勝ち取る以外にないのです。
他者から与えられたものに慣れていると、それを失った時踏ん張れなくなります。
15歳という若さで孤独を背負ったチャーリーは心身共に強き青年に成長しました。
それは同時に今を生きる若者に何よりも大切なものを伝えているのではないでしょうか。
孤独であることの大切さ
本作は表面上辛く厳しい修羅の連続ですが、奥底では孤独の大切さを伝えてくれています。
チャーリーに必要なものは友達ではなく、孤独に耐えられる精神力と生命力です。
本作は途中で助けてくれる仲間は居ても、そこで安易な人情話に持っていきません。
本当に必要なものや大切なことは孤独の中からしか生まれないことを伝えています。
これは余りにも人の繋がりを強調し過ぎる現代社会への痛烈な批判でありましょう。
しかし、それを決して説教臭くならないようチャーリーの成長譚に凝縮してみせました。
本当に大切なものは今も昔も変わらないことを教えてくれた名作ではないでしょうか。