出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B018328AD0/?tag=cinema-notes-22
映画『罪の余白』は芦沢央の原作小説を2015年に実写化した作品であり、その原作は以下を受賞しました。
第3回野性時代フロンティア文学賞受賞作。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/罪の余白
この素晴らしい名作を大塚祐吉監督が映像化し、内野聖陽と吉本実憂が抜群の演技で魅せてくれます。
大学講師の安藤が娘の加奈の転落死を巡り、咲と名乗る少女との心理戦を繰り広げる物語です。
どちらも切れ者なだけに、最後まで復讐を誓う父と女子高生の駆け引きが凄まじい緊張感を生みます。
本稿では大学の水槽に安藤が闘魚を入れた意味をネタバレ込みで考察していきましょう。
また、木場咲が加奈をいじめた理由や安藤が学校のベランダで大声を出した真意も併せて読み解きます。
内野聖陽VS吉本実憂
本作は「予測可能だが回避不可能」という類のサスペンスドラマで、殆どの展開が予測可能です。
題材もいじめと復讐、更には表面上良い子を演じている悪魔の咲などキャラも割とありがちでしょう。
しかし、それを何倍にも魅力を膨らませられたのは主演2人のずば抜けた演技力の賜物です。
娘を失った悲しみを抱えながら静かなる狂気の復讐鬼という難役をベテラン・内野聖陽が見事に演じました。
そしてまた、頭の切れる知能犯というテクニカルな役を演じた吉本実憂も彼に当たり負けせず伯仲しています。
特に吉本実憂は普段が可愛らしい人柄で通っているだけに、別人の如き冷徹さを湛えた演技力が光るのです。
女優としての新境地を開拓することに成功し、より一層高みへと登られたのではないでしょうか。
大学の水槽に闘魚を入れた意味
序盤で安藤聡は娘の加奈に闘魚を飼い、家で戦わせるということをやっていました。
その闘魚をラストでは大学の水槽に入れましたが、何の意味があるのでしょうか?
じっくり読み解いていきます。
2つのメタファー
まず本作において、闘魚は2つのメタファーになっています。
1つ目が親子の忘れ形見、そして2つ目が聡と咲の戦いというメタファーです。
聡は咲との戦いを通して、より亡き娘への想いが強くなったのではないでしょうか。
普段家に飾っておけばいいはずの闘魚をわざわざ大学にまで持ってきているのですから。
そしてまた、闘魚の戦いは同時に聡と咲の戦いをも意味しています。
冒頭の闘魚がその伏線となっているのですが、これがラストでも象徴的に出てくるのです。
ここからはそれぞれの意味をより深掘りしていきましょう。
聡は復讐鬼へ
1つ目のメタファーを掘り下げると、聡がラストで完全な復讐鬼へ陥ったことを意味しています。
加奈の転落死を認めないこともそうですが、何よりもラストで咲に突き落とされたのです。
少年院措置にはなったものの、咲は最後まで改心や反省といった罪への自覚が欠如しています。
それどころか、更に罪を重ねて自身の行いは何も悪くないのだといわんばかりです。
聡は徹底的に咲の人生を破壊するつもりでいるのではないでしょうか。
大学講師という肩書きを捨てて、父親としての復讐を誓ったと推測されます。
それ位しなければ、咲という強敵を倒せないと踏んだのでしょう。
終わりなき修羅
2つ目のメタファーを掘り下げると、これは聡と咲の終わりなき修羅の始まりでもあります。