学校は先生や真帆たち取り巻きがいるせいで、完全な女王様なので勝ち目がありません。
しかし、学校の外で取り巻きがいなければ、単なる1人の少女に過ぎないので聡が有利です。
わざと目立つようにして、敢えて自分側のフィールドに持ち込むよう仕掛けました。
勝算があった
2つ目に、終盤の段階では聡にもきちんと勝てるだけの切り札がありました。
まず加奈がしたためていた日記に復旧した加奈の携帯を使っての録画です。
そして何よりも、咲が女優志望であり芸能事務所に応募して断られたという弱味を握っています。
もし咲が認めない場合、その録画や証拠品をマスコミに提出する算段だったのです。
そう、終盤に来て咲の最も痛手となる弱点を突くことに成功し、遂に追い詰めました。
ここに持っていく為の前振りとして、わざと咲に花を持たせて有頂天にさせたのです。
目には目を歯には歯を
これらの流れをまとめると、聡は咲が加奈にしたのと全く同じやり方をしたことになります。
すなわち敢えて弱々しく情けない感情的な父親のキャラクターを逆手に取ったのです。
それを早苗に相談の上で控えて貰い、咲を得意げにして自分の懐に入り込ませます。
そこまでやって尚咲が自供せず黙秘権を貫くことも想定済なので録画までしているのです。
結果的には上記したように咲に突き落とされたとはいえ、見事に逆転しました。
同時に咲にとっては自分が加奈にやったことをそのままやり返された形となります。
策士策におぼれる
こうして全体を見ていくと、咲の敗因は結局の所「策士策におぼれる」に尽きます。
勝ちに不思議の勝ちあり負けに不思議の負けなしという言葉を如実に体現していました。
前半で聡が負け続きだったのは加奈と咲の関係性やいじめなどの情報が不足していたからです。
逆に咲の方は情報こそしっかり持ち合わせていましたが、心に油断がありました。
おバカな娘の父だから策を弄すれば簡単に勝てると思っており、舐めていたのです。
その心の甘さが結果として因果応報という形で自身に跳ね返ってきたのではないでしょうか。
いじめの残酷さ
本作を通して改めて描かれているのはいじめの残酷さです。
いじめというとニュアンスとして軽そうですが、漢字に直すと「虐」なのです。
そう、いじめは立派な犯罪であり、自殺に追い込もうが未成年だから処罰の対象になりません。
しかし、それをいいことに人を平気で貶める子供がのさばっているのも事実でしょう。
特に咲のような表面上いい子している人程そういういじめっ子になりやすいのです。
それ位現代のいじめは巧妙化・陰湿化していることを2人の対決を通して描きました。
それだけ根深い問題である故に聡と咲の戦いは終わることはないでしょう。