プライドの高さ
こちらも何度も繰り返される、土方への「プライドが高い」という言葉。
これはそのまま、土方と似た伊東へも適応されます。
お互いにプライドが高いまま、伊東は自分の思想を曲げず、土方は自分の信念を貫きます。
これは土方がトッシーになったときにはブレますが、真選組の鬼の副長土方十四郎としてのプライドと、勉学武術とに秀でた伊東鴨太郎のプライドの高さは、武士としてのあるべき姿を捉えた並々ならぬ高さです。
裏切り者は裏切りによって死ぬ
これは高杉の直の手下、窪田正孝演じる河上万斉のセリフで、因果応報を拡大解釈したセリフです。
身に余ることをしようとした者は、その反乱に遭って死ぬ。
プライドの高い者はプライドの高さによって死ぬ。
こうして考えていくといくらでも言い換えができます。
絆を軽んじる者は、絆を軽んじる者によって死ぬのです。
真選組に囲まれる最後のシーン
「このままでも死ぬけれど副長との決闘で負けたという名誉を付けて死なせてあげる」という理屈は現代ではあまり通用しませんが、局長法度「敵と内通した者はこれを粛清する」という項目と、伊東についた隊士が沖田によって黙って粛清されたことを鑑みれば、かなりの恩赦なのです。
敵と内通して殺されたのではなく、鬼の副長と決闘して破れて死んだ方が、武士にとって名誉ある死に方といえるのです。
そうして死にかけた伊東の目には、土方や近藤をはじめとする隊士たちとの絆がはっきりと見えます。
認めてほしいなら、まず自分から認めれば良かったのだという後悔とともに、世の人は駒などではなく人であり、そうした人との「同じ組織に属する」という意識や「師弟関係」「殺意」までもが絆だと、ようやく気づいたのです。
主題歌の歌詞に込められた意味
back numberが主題歌を務める今回の作品ですが、その曲名は「大不正解」です。
同じ物を欲しがって
同じ時を過ごしたのが運の尽き
縁が目に見えりゃもうきっと腐ってる
出典: 大不正解/作詞:清水依与吏 作曲:清水依与吏
「腐れ縁も絆のひとつなんだな」という伊東の言葉を再現するかのような歌詞です。
安い化けの皮を
噛み付き合い 剥ぎ取り合って
互いを見付けて来たんだろう
補い合うのなんざご免なんだ
さぁ好きに踊ろうぜ
暑苦しいのなんざご免なんだ
まぁ好きに呼べばいい
出典: 大不正解/作詞:清水依与吏 作曲:清水依与吏
「補い合うのはご免だ」といいながらも「好きに呼べ」という様子はまさに腐れ縁を表しています。
近藤との再会も、封じたはずの土方が気合いでチップを打ち破って伊東を助けたことも、そして最後に伊東を斬ることになることも、すべてが縁で絆なのです。
ありがとうに込められた意味
一見すると「最期に絆に気づかせてくれてありがとう」と解釈できるこの「ありがとう」ですが、ここまでのことに注目すると他にも意味がありそうです。
武士の名誉
真選組を乗っ取ろうとした反逆者として処分することもできました。
それをしなかったのは、ひとえに「殺すなら自分が殺す」という土方の想いと、近藤の「教えを乞うた人物をただの反乱分子として処分したくない」という想いと、「同じ真選組隊士として」という真選組隊士たちの情です。
もちろん伊東派と呼ばれた他の隊士にもこうした形を取りたかったでしょうが、死者は蘇らないので伊東だけがこうした決闘という形となりました。
絆への応え
差し伸べられた手はたくさんあったのに、その手を「自分の器に見合わない、ただの駒」として切り捨てたのは自分であったことに、伊東はようやく気づくことができました。
それを気づかせてくれたのは、紛れもなく自分が排除しようとした土方です。
自分の愚かな行為に目をつむっただけでなく、こうした絆に気づかせてくれて、そして最期に自分の心を満たしてくれてありがとう。
そういう意味も確実に含まれています。
自分を止めてくれて
伊東は土方と近藤を殺害し真選組の一新を狙いました。
ただその作戦は失敗し、2人とも生き残っている上に自分に情までかけてくれました。
伊東の計画通りに作戦が成功していたら、伊東はまだ絆という「自分の心を満たすもの」に出会うことなく、腐れ縁2つをなくしていたのです。
最期に自分の心を満たして、自分の大切なものに気づかせてくれて、それを自分の手で壊さずに済んだことに対しての「ありがとう」。
これが1番大きな「ありがとう」の理由でしょう。