唯川は子供の頃からずっと香菜を思っていました。でも彼の劣等感からそれをいい出せずにいたのです。
香菜のために役立ち立ちたい一心で唯川は香菜の情報を集めたり、さりげなく香菜に近づこうとします。
これらの行為は香菜にとってストーカー行為的に映ることもあったでしょう。
でもこれらの唯川の行動が香菜のピンチを何度か救うことになるのです。
恋愛においては相手に思われるよりも相手のことを強く思う方が幸せな場合があります。
たとえ二人に運命的な交差が起こらなくても、自分の素性を隠したまま香菜を思い続ける唯川は幸せであり続けるのかも知れません。
香菜は何にきづいたのか
香菜は婚活パーティの主催者でもある占い師の男から「全ての嘘は悪なのか」と問いかけられます。
ここで香菜は元彼の裏切りによってから植え付けられた「とにかく男の嘘は許せない」という自己のトラウマの存在に気づきます。
占い師の男は化粧する女もある種の嘘をついているのではないかと指摘しますが、香菜は自分も多くの嘘をついていることに気づくのです。
そして呪縛がとけてみれば、唯川こそが彼女の運命の人だということに気がつくのにさほど時間はかかりませんでした。
香菜の嘘
香菜は母親から見合いの写真を送りつけられ、これを回避するために結婚を約束した男がいると嘘をつきます。
よくありがちな緊急危難的な場当たり的嘘です。この嘘がなければ香菜は婚活パーティに行くこともなかったのです。
香菜は多くの女性がそうであるように本当は運命の人との出会いを求めていました。
でも彼女は自分自身に嘘をついて年収や容姿・肩書きなどの男性のスペックでパートナーを選ぼうとします。
元彼の浮気を許そうとしたのも自分の心を偽った打算的な判断でした。
もう一つの嘘
この物語にはもう一つの決定的な嘘があります。
運命の人などというのは本当に存在するのでしょうか。
物語的には存在するとした方が盛り上がるのは事実ですが、それはやはり嘘だといわざるを得ません。
ましてや婚活パーティで出会う10人の中に一人だけ嘘をつかない人がいて、その人こそが運命の人だというのは、物語ならではの嘘なのです。
でも人はこのような嘘がなくては生きていけないのかも知れません。人を幸せにする嘘も存在すると信じたいのが人情なのではないでしょうか。