でもこれを父親のデビットにはいい出せないまま、黙ってピアノレッスンを止めていました。
このためレッスン料がたまりに貯まって2,500ドルになっていて、それがマーゴットの車に残されていたのです。
マーゴットがレッスン料をため込んだわけ
マーゴットがピアノのレッスン料を貯めていたのにはもう一つの理由がありました。
SNSで知り合ったハンナの病気治療にあてる費用を捻出するためです。ハンナはロバートのなりすましでした。
ロバートに渡したはずの2,500ドルがマーゴットの車に残っていたのは、ロバートがマーゴットにお金を返したために違いありません。
このためマーゴットはハンナがロバートのなりすましだったことを知ることになり、激高したマーゴットとロバートはもみ合いとなりました。
ロバートがマーゴットに自分の正体を明かせば、どのような結果になるかロバートは考えなかったのでしょうか。
バーチャル空間での出来事がリアル空間に引き継げると考えていたのであれば、彼の思惑はあまりに幼く、単純といわざるを得ません。
デビットがヴィック刑事を怪しんだきっかけ
デビットは当初ヴィック刑事を信頼しきっていました。これまでの彼女の実績からもそのように考えるのは自然でした。
ふとした切っ掛けと執拗なデビットのsearch/サーチでデビットはヴィック刑事の正体を暴くことになります。
物語は一気に大どんでん返しの見せ場に進んでいくことになるのです。
マーゴット行方不明事件捜査担当を志願したヴィック刑事
ヴィック刑事はデビットに「マーゴット事件を担当させられた」と言っていました。
しかしデビットはふとした切っ掛けで実はヴィック刑事はこの事件の担当を自分から志願した事実を知らされます。
普通であればこの違いはそれほど大きな意味を持ちません。聞き流してしまっても不思議ではないのです。
デビットがこれに引っかかったのは、単なる薬物中毒の異常者の犯罪としてこの事件を受け入れ切れていなかったためでした。
「何かおかしい」という感覚がデビットの頭に残っていたのです。
なりすましだったハンナ
ハンナがロバートのなりすましだったことを見抜いたのも偶然でした。
この辺りはやや出来過ぎな印象がありますが、簡単になりすましが成立してしまうネットの恐怖が的確に描かれているともいえます。
出会い系サイトで変質者が普通の女子高生などになりすますことがさほど珍しくないことを思わずにはいられません。
親と子
この作品では親と子の精神的な行き違いが描かれています。
このお互いにわかり合えないすれ違いこそがこの事件の根本的な原因ともいえるのです。
デビットとマーゴット、そしてヴィック刑事とロバートという二つのケースを見てみましょう。
デビットとマーゴット
母親が生きていればデビットとマーゴットにこれほどの溝が出来ることはなかったことでしょう。
あまりの喪失感のために亡き妻の話題を避けようとするデビットはマーゴットにすれば冷たい父親と映ったかも知れません。
一方母親という理解者がいなくなり口数も少なくなったマーゴットはデビットにすれば触れるのがためらわれる腫れ物のように映りました。