妻や息子を自分の付属物の一部と勘違いしています。
環境や自分の肉体という器が変化しているにもかかわらず、中身の精神状態が変わらない故の哀れさを感じさせるではありませんか。
そんな彼もレントンとの過去の確執に真っ向から立ち向かうことによって、少しは現実との折り合いをつけることになりそうです。
帰ってきたレントン
レントンはなぜオランダからスコットランドのエディンバラに帰ってきたのでしょうか。
昔とは様変わりした街にかつての仲間たちを訪ねるレントンは何を思っていたのか探ってみましょう。
若かりし日のレントンが過ごした彼の部屋は、数少ない変わらないものとして、あの頃のまま残されていました。
彼が仲間に会いに来たわけ
レントンはあの頃の日々が何だったのか確かめに帰ってきたのです。
トレーニング中に心臓発作で倒れたレントンはもう若くない自分に気づかされます。
トレーニングに勤しむこと自体自分の体力の限界を意識し始めた証拠でもありました。
彼は20年間少年時代の自分や仲間たちとわけもなくハイテンションでつるんでいた頃の自分に引きずられたままの人生を送っていました。
現実との折り合いがつけられていなかったのです。
かつての日々が何であったのか。胸に突き刺さった鈍い痛みが何であるのか。
これらを確かめるためにはもう一度エディンバラに帰るしかありませんでした。
レコードの謎
レントンは自宅の部屋でかつて聴いていたレコードに針を落とした直後、眉をひそめてプレーヤーを止めてしまいました。
このシーンは彼の心情を痛いほど痛烈に表現しています。
レントンはそのまますんなりとあの頃の気分には戻れない自分に直感的に気づきました。
現在の自分の居場所には満足できない。でもあの頃の自分に戻ることもできない。では彼の居場所はどこなのでしょうか。
レントンはそれを探すためにもエディンバラに帰ってきたのです。
ベロニカの決断
ベロニカは現実的でした。サイモンの思いとは違ってベロニカは自分の現在地が理解できていました。
少なくても自分はこの状態から抜け出さなくてはいけないことはわかっていたのです。
かつてのサイモンたちがどこにも自分たちの居場所がないことから、破滅的に生きることに存在意義を見いだしていたのとは違っていました。
現実との折り合いをつけ、選んで生きる人生の道を選んだのです。