実は戦争の英雄であるはずの不死身のギジンは弟のギスが精神的に支えていたのです。
この二人の兄弟愛はイデオロギーの嵐の前でも決して揺らぐことはありませんでした。
しかしこの揺るがなかった兄弟愛が悲劇につながっていきます。
所長殺害のための銃を取りに舞台裏に下がったギスを突き飛ばし、自ら所長ら米兵に銃を向けたギジンの行動は弟への兄弟愛ゆえでした。
この行動が結局スウィング・キッズの面々の死を招くことになることはギジンの思考を超えていたのでしょうか。
そして忘れてはならないのはギスが所長殺害を決意したのは、決してイデオロギーのためでもなく自己保身のためでもなかったことです。
彼は兄のギジンの立場を思い、自らが犠牲になろうと決意しました。
音楽
音楽が世界共通の言語であることは周知の事実です。音楽は民族、性別、出生など全ての違いを超え互いを結びつけることが出来ます。
音楽はイデオロギーすら超えるのです。
事実スウィング・キッズの面々はそれぞれの境遇や思想を超えて一つのチームとして純粋にタップダンスを極めていきます。
ジャクソンは彼らをアメリカに連れて行って巡業させる夢さえ見ることになるのです。
自分は何のために踊るのかと悩むギスにジャクソンがカーネギーホールのパンフレットを渡すシーンは象徴的といえます。
家族愛・夫婦愛
この作品ではギスたちの兄弟愛だけでなく、家族愛や夫婦愛も揺るがない絆として描かれています。
両親を亡くし一人家族を支えるパンネも、沖縄に残した日本人の家族に会うことを強く望むジャクソンも同じ目線で描かれているのです。
戦火の中で生き別れになったビョンサムはひたすら妻を捜し求めます。
彼は妻が女の身でどのようにして生きていかなければならないかという現実を理解していました。
それでも彼はどのようになっていても妻に生きていて欲しいと願うのです。
食うために米兵に身を売る妻を見る彼の心情は察して余りあります。
何も出来ない彼に代わって、パンネが彼の家族に救いの手を差し伸べたことを知ったビョンサムは喜びに身を躍らせるではありませんか。