自分はなんてことをしてしまったのだろう、という申し訳ない気持ちでいっぱいだったのです。
本当の娘でありたかった
虚言癖というものはどんどん深みにはまり、嘘か現実か自分でもわからなくなる場合があります。
おそらくナンシーは、この錯覚にはまりつつあったのではないでしょうか。
ブルックの30年後の写真は自分に瓜二つであり、夫婦からも娘として扱われたのです。
観る者が、もしかしてナンシーは本当の娘なのではないか、と感じたようにナンシー自身も錯覚を起こしていたのでしょう。
DNA検査がなければ、ナンシーは二人に愛され娘として幸せになれたはずです。
夫婦の為にも自分が本当の娘であればよかった、そう思っていたのかもしれません。
立ち去った真意
ナンシーはなぜ立ち去ったのでしょうか、夫妻の家に残るという決断も出来たはずです。
嘘の世界にはいられないから
検査結果の連絡が来た時点で、自分の嘘はバレていたはずです。
しかしエレンはそれでも自分を受け入れようとしていました。
ナンシーが留まれば、娘の代わりとして家においてくれたかもしれません。
しかしそれは、やはり虚無の世界なのです。
いくら許されても自分の嘘はゼロにリセットされることはない、ナンシーは自分の作り出した嘘の世界から逃げ出したのでしょう。
エレンを傷つけたくないから
自分が打ち明けようとしている嘘をエレンは全て知っている、ナンシーはそう気づいたはずです。
自分が話す内容がエレンを傷つけ、再び絶望させることは目に見えています。
そしてエレンは嘘をついた自分さえも、いい人だと受け入れてくれたのです。
これ以上自分が側にいては、信じた人に裏切られたというエレンの傷が広がってしまいます。
二人を騙して姿を消した悪人になってこそ、エレンの傷は浅く済むと考えたのかもしれません。
自分にはふさわしくない場所だから
エレンは長い間、心の底からブルックが現れる日を待ち続けています。
ナンシーは偽物である自分が、いるべき場所ではないと感じたのでしょう。
エレンは偽物であることを分かった上で、自分を家に置いてくれようとしているのです。
しかし、本来なら夫妻の家はブルックの場所であり、自分が居ていい場所ではありません。
彼女の優しさや寂しさに甘えてはいけない、そう感じたのでしょう。
いつか本当のブルックが戻ってくることを祈って、身を引いたと考えられます。
レオの心境
ナンシーが立ち去るのを止めようとしなかったレオですが、彼はあの時どのような心境だったのでしょうか。
彼は初めからナンシーを疑い、娘として受け入れてはいませんでした。
妻を傷つけたくない、という思いが強かったのでしょう。