そしてその潜在的な能力を開花させるためには強い思い込みも必要になってきます。
いい方を変えると、その思い込みを逆手に取れば能力を消し去ることも可能ということになるのです。
ステイプルたちのアプローチはこれに基づくものだったのでしょう。
あのデヴィッドさえステイプルによって自分は通常の人間と何ら変わらないのではないかと思い始めるではありませんか。
ヒーローと悪役
物語ではジョセフがヒーローグッズのショップを訪れた際、思わず悪役コーナーに目を奪われるシーンがあります。
これはヒーローと悪役は同じコインの裏表の関係にあることを暗示しているのはないでしょうか。
どちらも特殊な能力を持ち、通常の人間ではありません。
ヒーローと悪役はむしろ共通点の方が多く、ヒーローはふとした切っ掛けで悪役に転じても決しておかしくないのかも知れません。
ステイプルたち世界を平準化しようという勢力とは対極の存在であることもまた同じなのです。
マジョリティとマイノリティ
謎の組織とイライジャたちの戦いはマジョリティとマイノリティの戦いとも理解できます。
ある意味ではどちらがマジョリティをとるかの戦いともいえるのです。
この物語の結論はヒーローのような存在は現実に実在し、潜在的な存在も含めると決して少数でもないというものといえます。
それらが顕在化していけば、世界は大きく変わってくるでしょう。
ひょっとしたらマジョリティとマイノリティが逆転する可能性すらあります。
この物語は先天的・後天的な要因によってマイノリティの領域に押しやられてしまっている人々に対するエールの意味もあるのかも知れません。
監視人と群れ
この物語で語られる監視人と群れという存在は少しわかりにくいかも知れません。
もちろんこれらはデヴィッドとケヴィンのことをさしています。
悪人を探し出し懲らしめる監視人がデヴィッドで、多重人格者のケヴィンが群れなのです。
世間を騒がすニュースに敏感なネット住民が彼らのことを名付けたのでしょう。
【ミスター・ガラス】は周到なイライジャの勝利の物語
この作品は【アンブレイカブル】【スプリット】の続編という位置づけですが、イライジャと謎の組織との戦いとして十分に楽しめます。
廃人を装ったイライジャがステイプルを見事に出し抜くくだりは小気味よさを感じさせるではありませんか。
この物語では世の中のマイノリティに対して一種のエールが送られています。
マジョリティとマイノリティの境界は実は曖昧で、それは思い込みに過ぎなかったりすることを訴えているのかも知れません。